Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

さわやかな気分


 朝、Yシャツを抜けていく空気に秋を感じ始めた。通勤のホームで、通過列車が巻き起こす風の流れが、僕の身体を包む。そのとき、スッと抜けていく空気のなかに、ひんやりとした涼しさを感じるようになった。秋だ。


 ある時間のラインを越えると、突然に、秋が到来するのではなく、空気中の夏の粒子が、少しずつ、だけど着実に、秋の粒子と入れ替わっていって、気がつくと秋の粒子が空気の大半を占領していて、秋になっている。空気が、完全に秋の粒子で埋め尽くされた次の瞬間には、冬の粒子の侵略が始まっていく。季節って、そんなものではないだろうか。そう思う。


 会社に行くと、爽やかな季節にそぐわない光景が、僕の目の前にあらわれた。オフィスの共用部分にあるゴミ箱の周りに、紙かなにかの、細かいゴミが散乱していた。僕は、自分でも似合わない行動と思うけれど、ロッカールームから道具を取り出して、黙々と掃除を始めた。特に理由はないけれど、なぜか、掃除をしたい気分になったのだ。純粋な善意といっていい。


 そんな、ゴミ箱の周りで活動している僕の傍らを、社長が通りかかった。優しい言葉を待ち構えていた、片手にプラのチリトリを持った僕に、社長のありがたいお言葉。「あのさー。ゴミ出すなよなー。ちゃんと片付けておけよ!汚いと来客のときにみっともないだろう。仕事の効率が上がらないぞ。とにかくもう汚すなよな!」僕の背中の、Yシャツと皮膚の間の狭い空間を、涼しいものがスッと抜けていった。殺意、とは思いたくない。