Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

未来の約束


 夕焼けが綺麗だった。静岡で見た、お茶畑みたいな段々を空に描いた雲が、夕焼けの橙に照らされて作り出すグラデーション。会社の休憩室の窓から、グラデーションが濃い紺色に染まっていく様を眺めながら、僕と同僚は、先の見えない未来について話あった。年金頼りの暗い未来の話だ。時折、話をさえぎるように、厚木基地に向けて、飛行機雲が伸びていった。


 同僚は言う。「もし、将来、僕らのうちどちらかが、どこかの街のガード下で、ダンボール生活をしているのを見かけたら、何も言わずに一万円札を差し出さないか」僕は答える。「わかった。約束するよ。僕は何も言わないし、問わない。ただすっと一万円を差し出してその場を去るよ」「美しい友情だ」「この友情は永遠だよ」


 「ありがとう、君の友情に感謝する。もし僕のダンボールの中で、美女が乳房を露にして寝息をたてていても、君の友情は変わらないよね」とつけ加える同僚。「それは保障できない。君だから正直に言う。そのシーンを目撃したら、僕は黙殺するかもしれない。そのときは許してくれ」と僕は応えた。「残酷だね」「青春はいつだって残酷なんだよ」いつしか夕焼けは闇に飲み込まれて小さくなっていた。「残酷だね」確認するように、彼はもう一度言って、笑った。