Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

質問ですかレロレロレ

 お前に訊きたいことがあると部長から内線で告げられたのは午後6時9分。仕事を投げ出しiPodと鉛筆を鞄に投げ入れ小学生のときの避難訓練の要領でデスクの下に潜りヤンマガの袋綴じグラビアをビリュリュリュと手刃で切って四つん這いのワンワンスタイルでベロをレロレロレロレロと高速に動かしながら眺め始めたときだ。バッキャロー!ロケンロー!レロレロー!僕は灘坂舞ちゃんのJカップの前でベロをレロレロするためだけに袋綴じに閉じ込められたような心持ちで今日一日を送ってきたのだ。堪へ難きを堪へ忍ひ難きを忍ひ以てレロレロの爲に袋綴じグラビアを開かむと欲す、そう過ごしてきたのだ。部長よ、あなたに僕のささやかな幸せを邪魔をする権利があるのですかと思いつつもわかりましたと無意識のうちに応じている自分に驚く。なぜって?聞いちゃうソレ。ソレ聞いちゃう?リーマンだからに決まっているだろう…。


 「個人的にお前に尋ねたいことがある。5分後に応接シツニ コ イ…」と次第に機械的になりながら最低限の用件を伝えると部長は内線を切った。僕は正確に4分間、印刷されたJカップの前でレロレロを繰り返し続けた。レロレロレロレロレロレロ。そんな僕の心の芸能人ベストテン第一位はいつだってイジリー岡田。レロレロレロレロ。舌が二枚あったらたぶん飛べた。カナブンみたいにブンって。


 レロレロのやりすぎでベロがベロンベロンになった。僕は応接室に向かいながら部長から呼び出された要因について考えてみたけれど、思い当たる節が多すぎて最後には開き直っていた。サマージャンボは連番で買ってある。前後賞付で当選すればこんなところは速攻グッドバイ。ちょい待て。待てちょい。マイナス思考すぎるな。もしかしたらいいことかもしれないと前向きに考える。たとえば「今から俺はハラキリするから介錯をお前を任せる」みたいなウルトラ・スーパー・ハッピー・ポジティブな話かもしれないじゃないか。そういう話ならハラキリの前に介錯して差し上げますよ部長。「ちょ、ちょっと待て。早いって!早ーい!」「御免!」首ピョーン。血ドババーッ。てな具合にね。行きたいッスね。イエイ。なんてね。


 ノックノーック。失礼しまレロ。入れ。呂律が回らないまま応接室に入ると部長がまるで腋臭を押さえ込むかのように大袈裟に腕を組み、ソファーに深く沈み込んでいた。その表情は暗く、ただでさえ客先で暗いといわれる顔つきを一層陰湿なものに変えていた。僕が正対したソファーに腰をかけると部長は胸のポケットから折りたたんだ紙を取り出し、気持ちが何万光年も離れている二者の間に置かれた応接セットの上に開いて置いた。それはA4の紙だった。スポーティーな格好をした女性が印刷されていた。見覚えのある顔だった。


 部長は落ち着いた口調で尋ねてきた。「この人のことをお前は知っているな…」僕は部長の言葉の真意を推理していた。何が言いたいのか?ただ、僕はこの女性を知っていた。沈黙を続ける僕に部長は畳み掛けてきた。「知っているな?」「はい」としか答えられなかった。選択肢はなかった。「ではお前に尋ねる…」部長が僕に何を尋ねようとしているのかわからなかった。これは何かの罰か?罠か?僕はA4の紙に印刷された女性たちを知っていた。ただ部長の言わんとすることだけがわからなかった。部長は無力な僕に構うことなく質問を続けた。「この二人…『オグ』はどっちだ?」