Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

グレイトフルデイズデッド


 土曜の朝。テレビは「皇室アルバム」。僕は1000mlパック牛乳に口を直接付けて飲む。牛乳が僕の喉をごろごろと鳴らして身体の一部になっていく。小学生のときに「牛乳は飲むんじゃなくて噛むんだ」と先生に言われたのが習慣になっている。もぐもぐもぐもぐもぐ。もぐもぐ噛みながら僕は朝を観察する。静かだ。近隣のオッサンどもの奏でるオエーッ協奏曲も今朝はない。朝日が差し込む机の上。過去に読まれていない雑誌、未来に読む可能性のない雑誌の山。雑誌を捨てられるのは月に二回。第一・第三火曜日。この連休が明ける前に捨てられるようにしておかねばならない。牛乳をもぐもぐと噛み終えた僕は雑誌をまとめて適当な大きさの塊にしてビニル紐で縛っていった。写真雑誌が一冊こぼれ落ち、けばけばしいゴシップが床のうえで派手に踊り僕はとても悲しい気持ちになる。二世タレントのスクープ。不倫。僕はこういう記事が嫌いだ。大きなオッパイをした奥さんが家で待っているのに適当な相手と浮名を流すなんて僕の理解を超えている。別の惑星の行為に思える。嫌なんだよ。人の悲しみを増幅させる行為とそれをショウにするのを目にするのは。くだらない仕掛けを耳にするのは。雑誌をまとめ終えた僕はゴミの分別作業に没頭しはじめた。そのうち気分がよくなってきて、自分のことを振り返りながら僕は歌を歌う。僕だけのライムで。


 「僕は鎌倉生まれキャバクラ育ち、割れそうなビンは大体分けたし、割れないカンも大体分けたし、悪そうな野菜も大体捨てたし、悪そうなやつと大体同じ、裏筋舐められるとキモティーこの性質、渋谷 陽一 そう思春期も早漏に、これにぞっこんに、カバンなら置きぱなっしにしてきた電車に、マジでEDになっちゃった本当に、だがたまに勃ち今じゃエロ本のなか そこらじゅうで幅きかすTENGADA TENGA掴んだらマジでNO.1微妙順位だトップハテナーじゃ そうこのチンコのクンニに性を授かり ジャーで無敵のTENGA預かり 鮎川や大沢やAVギャルたちに今日も顔射して進む荒れたオナロード」


 Kj。君は偉大なる父親、古谷一行に遥かに劣る。AV嬢との密会を毅然とした態度で認めた君のパパはヒーローだ。大体Kj、君はなんだ?大きなオッパイと新しい命が家で待ってるというのに。それ以上のものなんてこの世の中にはないというのに。僕は大体のことは許せる。世の中は大体のことをあっという間に風化させてしまう。だが僕はオッパイを悲しませる君を許さない。忘れない。それでも、それでも。朝の空気の爽やかさは僕の嫌な気分を柔らかく、丸くしてくれた。歌を歌いたくなるほどまでに。僕は知らず知らずのうちに大体な感じの適当な歌詞をくっつけた「グレイトフルデイズ」を口ずさんでいた。大体僕はMEGUMIの顔が思い出せない。彼女のオッパイなら空に鮮明に描けるというのに。ゴミを分別し終え、僕は窓を開けた。眩い陽射しに目を細める。秋風が部屋を吹き抜け、メグミルクの空きパックがかららと音を立てて床を転がる様を僕は見た。これ可燃?不燃?