Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

私の異常なお見合い・紅蓮篇 または私は如何にして歴女に対し膣ナラについて語るに至ったか。


 何かおかしい、何となくそんな気がした。そのとき、徹夜明けの僕は、お見合いを忘れるように足を運んだ、「おはようございますプロデューサー!」なーんてカワイイ女の子がしなしな挨拶してくれる《アイドル育成カフェ》について考えていた。ポイントが貯まると記念撮影やら何やら楽しいことができるシステムの《アイドル育成カフェ》に行ってしまったら、「誰だってエビちゃんになれる」的特集が毎号掲載されている小悪魔アゲハを読み、経典の如く崇め、個性も何もなくなってしまったキャバクラなんて過去の遺物、「諸君らが愛してくれたキャバクラは死んだ。なぜだ!?」「アフター出来ないからさ」。


 ついでにお見合いも死ねばいいのになんて。諸君らが企ててくれたお見合いは死んだ。なぜだ!?インポだからさ、つって。わあ今度はどのアイドル候補生を応援しよーなんて考えていると、なんとなーくそろそろノッピー☆が騒ぎ出すような気がした。ノッピー☆とは僕のお見合い相手、戦国好き西軍派スザンヌ似の推定Eカップ、シノさんのコスプレ時の名前。ケータイが歌う。たまっしぃいいいのルフーラーン。背面液晶、パターン青、シノです!「一ヶ月ぶりですうーご飯でも食べに行きましょう。それじゃ御免なすって」「徹夜明けなので勘弁し…」ツーツー。電話は切れていた…。


 で、愛想悪いうえに便所臭い中華屋で便器みたいな皿に載せられた餃子二人分中ジョッキウーロン茶エトセトラがテーブルにドンドコドン。シノさんはいつもと違う感じの格好をしていた。中世ヨーロッパ風っつーのか。長袖ロングスカートに白いソックス。黒ニーソじゃないのね中ジョッキ追加。特に話題がないので訊いてみる。「それは何のコスプレですか?」「軍略家らしく当ててみてくださいー」「『ローゼンメイデン』の真紅ですね?」やったか?「…」無言。違うのか。ちょっと気分を害したらしい。


 んじゃ、って「ハウス食品劇場の誰かですか?」「…」またも無言。レイヤーとしてのプライドをキズつけたか。「オヤカタサマ…」「ハイ?」「わっちの顔に何かついておりますか?」アニメ声。誰?何のアニメ?『狼と香辛料』?へーそんなアニメあるんだー。あ、ホロってキャラクターなんだー。ゴメーン知らない知らないよ?あ、深夜なの?エロアニメかー、へー。わっちEDになってからエロアニメやめてるんどすー。それからしばらくシノさんが「わっち」「わっち」騒ぐのを「中ジョッキ」「中ジョッキ」で応じているうちにハイ宴もタケナワ。


 唐突にノッピー☆が「オヤカタサマが好きなガンダムのTVシリーズ観ましたー」なーんて言うので「じゃあパンパカパーン、ガンダムクイーズ!シャア最後のモビルスーツはなんでしょう」と僕が尋ねると「『百式』ですうー!」とこれまたノッピー☆が言うので中ジョッキ飲み干し「ブブブブー。オナラじゃないの!恥ずかしい!オナラじゃないの!でも音が出ちゃうブブブブー!」シモネタで場を和ませてから不正解を通知する僕ってば優しいなあ。


 「ブブブー。正解はサザビーでーす」「サザビーなんて知らないですうー」。『狼と香辛料』の仇討ち取ったりで中ジョッキ追加。「ガンダムにかっこいい大尉出てきたでしょ。ノッピー☆はあの大尉なんてどうです?」ランバラル大尉。僕はああいうオッサンになりたい。「大尉といえばバックですうー」「バック大尉なんていたっけ?」「官僚顔の三成様に夜這いをかけた夜襲好きの兼続殿がバックから責める画を想像するだけで萌え萌えですうー」「えー!」。体位じゃねーよ…中ジョッキ、中ジョッキ!「白フンドシに愛の印の兜。たまらんですうー」。腐ってやがる…。


 中ジョッキ遅いよ!何やってんの!家に帰ってこけしを抱いて眠りたい。うう、こけしのディルド君元気かなーなんつって上を見ると中華屋の電灯の下にディルド君が浮かんでいた。ディルド君から林原めぐみの声。「オヤカタサマは、シノさんのことわかろうとしたの?シノさんの気持ちを」「わかろうとした」「ほんとうに、わかろうとしたの?」「わかろうとしたっていってるだろ!」「そうやって、いやなことから逃げているのね」。オヤカタサマー!オヤカタサマー!シノさんが僕を揺すっていた。どうやら酔っ払って眠っていたらしい。僕は酔うとすぐ寝るのだ。「オヤカタサマーお母さんが!」。あのオホホおばさんに何かあったらしい。


 店を出た。「シノさんの車で!」「松風号は妹が乗ってますう…」「松風号って?」「わたしのヴィッツ」。ああ、疲れる。オホホおばさんがいるスナックは歩いていくには距離があった。僕はあることを思い出して駅の向こう側へ歩き始めた。シノさんは落ち込んでいて動こうとしない。「シノさん行くよー」「うううー」「シノ!行くぞ」「ううう」。僕は大きな声で落ち込んでいる女の子の名前を叫んだ。


「ノッピー☆おいで!!!」


「オヤカタサマー!」


 すっかり忘れてたけど昨日、酔っ払った僕は駅前の駐車場に車を置いて帰ってたのだ。軍神の先見性ってやつ。ハハハ。



「これが僕の愛機、ナイト・オブ・ゴールドだよ」


「はじめましてナイト・オブ・ゴールド、私、ノッピー☆。よろしくね」


 腐ってやがる…。シノさんが運転席、僕が後部座席。ノッピー☆ママがいるスナックに向けて僕らの黄金騎士が鎌倉の夜の闇の中へとゆっくりと走り出していく。僕が言った。「ユーハブ?」。シノさんが応えた。「アイハブ」。腐ってやがる…僕も。