Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

私の異常なお見合い・策謀篇 または私は如何にしてアル中の上司を歴女と共に処理したか


 月曜午後一時の僕はソバ屋で部長と酒を飲んでいた。部長は「俺の言ったとおりゴンザレスをファーストからピッチャーにコンバートしたら、みろ、20勝投手だ。俺には人を見る目がある…」なんて、どの選手を指しているのかまったくわからないジャイアンツ話を僕に浴びせながら浴びるように日本酒を飲んでいた。


 部長の混濁した瞳に映る助っ人外国人選手は全員クロマティー。クルーンとオビスポとゴンザレスとラミレスを識別出来ないし、グライシンガーにいたっては「名前をど忘れした…先発の…黒人の…そうあれだグライシンガーだ…名字がグライで名前がシンガー。親は奴に歌手になってもらいたかったに違いないな…」と言う始末。そうですねぇ。なるほど。ガンダムはファーストですねえ。確かに。僕は部長の話を生返事で受け流しながら、ビールを飲み、バイトの子のたゆんたゆんなオッパイを眺めることに夢中だった。


 店を出た。振り返ると部長が死んでいた。バ...バカな...か...簡単すぎる...あっけなさすぎる.. 。ウウ。呻き声。死んでませんでした。酒の飲みすぎだった。救急車呼びますか、と訊くと仕事をサボって飲んでいたのがバレるからダメだと虫の息部長がいい、じゃタクシー呼びますかと訊くともう金がない、と危篤部長が応えるので、自腹を切腹したくなかった僕はシノさんに電話をかけた。シノさんは僕のお見合い相手でスザンヌ似の25才推定Eカップ、あるときはコスプレイヤーノッピー☆、またあるときは西軍派歴女志乃、その正体は趣味ドールのしの、そんな感じ。


 れろれろれろ…れろれろれろ…ぷっ。「あっシノさん?ちょっと助けてもらいたいんですけど今仕事中?」「わたしが何の仕事をしているか興味ありそうですねぇ」「僕はアナルパールを使うこととインポを治すこと以外はまったく興味ないです…。上司が倒れてしまってだね…」。事情を話してシノさんに車で駆け付けてもらうことになった。子供たちを着替えさせるので小一時間ほどかかりますうーだって。子供たちって言われて「すごいよシノさん。さすがドールのお姉さん!オッケーイ!」って言えちゃうから馴れだか慣れだかって怖い。


 シノさんは二時間半後に車でやってきた。部長は仰向けに倒れてぶつぶつしていた。さあ、お仕置きの時間だよベイビー。部長のバーコード頭は脂汗でぎとぎとしていて、その右耳から黒い虫が一匹入っていき左耳から二匹になって出ていった。「次にシノさんはオヤカタサマー!と言う」と僕が言うと「オヤカタサマー!はっ!なんでわかるんですかー???」とシノさん。「さすが軍神毘沙門天の生まれ変わり…上司まで討ち取るなんてー」「そうだよ…これが戦だよ…現実の戦国BASARAだよ…討ち取られると哀しいねえ憐れだねえ…史実の幸村は討ち取られたとき初老オッサンだからたぶんこんな感じだよ…」「幸村はこんなじゃないですうー。ところでこのバッチイ殿方は死んでるのですか?」


「きたない顔してるだろ…。


 ウソみたいだろ…。


 生きてるんだぜ、それ。


 たいした仕事もしてないのに


 ちょっと運がよかっただけで

 
 もう部長なんだぜ…」


「ホントだ息してるうー!」「さあシノさん汚いからビニル手袋をしようか…」部長をシノさんの車に積み込んで僕らは出発した。


 カーステからはスーパー歌舞伎が大音量で流れていた。後部座席の部長が、頭に響く…音をさげろ…と言ってきたのを僕は無視して音量をあげた。シノさんが「キミもやっとスーパー歌舞伎の素晴らしさがわかってきたようですね」といって笑った。「ロックンロール!」と言って缶ビールに口をつけた僕はこのまま車でメキシコあたりまで行ってみたい気分になっていた。