Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

とある友人の悲惨な離婚パート2


 これは嫁の借金問題によって離婚した友人(id:Delete_All:20091125 )のその後の話だ。友人の離婚の話を良かれと思って文章に起こしたのだが、先生、金欲しさのあまり、小説にしてくれとは確かにいった、名前を出していいともいった、だが世間にさらされ俺の心はひどくキズついた、文学者なら技巧をこらしてもっとうまくやってくれ、あんたには失望した、と当の友人から責められ、名前を特定するなんて酷い外道だ、と知人一同から罵られる、等々、結果は散々であった。確かに離婚というデリケートな話題にもかかわらず、ロックンロールな僕にしては愛と配慮が足りなかった文章だったと思う。そういった反省と数少ない友人を売りたくないという僕の気持ち。それらがこの文章が匿名である理由だ。


 で、離婚した、いい泌尿器科はいったいどんな治療をするんだ教えてくれ、という謎の訴えをする友人アライ(id:tell-a-lie)と北浦和で飲むことになり(うわー癖で名前を出してしまった!)、午後七時半に、北浦和駅に現れた彼の姿は、全身黒装束で黒いクマの上の目が虚ろで足どりはフラフラして幽霊のよう。あ、倒れた。「いったいどうしたんだアライ君!」「課長。俺はもうだめだ…」抱えるように東口の居酒屋へゴー。


 とりあえず生ビール。「元嫁は部屋から退散したんだろ〜?」「まだ嫁ですよ課長」。離婚の手続きは終わってないとアライはいう。男と女は難しいなー。35年ローンで買ったマンションの一室でハンコを押すだけでは済まないものらしい。大変だなーと生ビール追加。「まぁ嫁さんとは実質的にはもう別れたのだからいいじゃない」アライはいらだたしく煙草を吸い、「ところが参ったことがあってさ…」


 アライの話によるとアライ嫁がマンションを去った途端、玄関、廊下、ダイニング、リビング、書斎という順番で蛍光灯が切れていって空襲管制のような暗いマンションで毎晩膝を抱えて過ごしているらしい。女の情念!「え〜なにそれこわすぎる!」まるで貞子じゃん。く〜るきっとくる〜きっとくる〜。「慣れない独り暮らしだし、ただでさえ一人でマンションは広すぎるのにさ、凹むよ…」アライの吐く煙草の煙が弱々しい。「すぐに慣れるよアライ君…」「だといいんだけど…女はこわいねえ」生ビール追加。


 「ところで泌尿器科ってなんだったの?」アライはメールで、インポテンツの治療を続ける僕に、今から泌尿器科にいくが泌尿器科童貞の俺は不安だ、いったいどういう治療をするのだ、チンコは差し出さなきゃいけないのか、もし出すならそれは通常時かエレクト時かそれともガウォーク時か皮はむくのか、むかないのか、不安をぶつけてきていたのだ。僕は不安をあおるのはよくないと考え、ただひとこと、チンコは出すよ、と返していた。生ビール追加。


 「マジでチンコどうしたの?」「いや、離婚騒動の直後から痛くてさ…」「チンコの先?根元?」「先。もう先っちょが死ぬほど」嫁とはセックスレスだったはずなのに!アライ君僕の気持ちを裏切ったな くそうこの裏切られたセカンド童貞共感覚をどうしてくれる?「アライ君がなにをいっているかわからないよ!セックスレスだって言ったじゃないか!女なんか悪魔だ虫だって言ったのに!僕を裏切ったな!」「なに言ってんの課長?」


 「…いや、だからさ性的な病気になったんだろ〜?元嫁さんとの激しいセックスがもとで…」「なにいってんの、医者にも聞かれたって」「何を?」「奥さんとの頻度とラスト」実に面白い。「そ、それで何と?」「いや、事実をそのままを話したよ」元アライ夫妻はセックスレスであったこと、最後のセックスが遠い昔であることを医師に話したらしい。それでいいんだよ。女なんてねぇ人の魂を喰らう化け物なんだから。「こころのともよ〜〜」「なにそれ課長マジで気色悪い。つか同情するなら女紹介してよ」余裕ねえし。生ビール追加。


 要するに離婚騒動による精神的な苦痛と、嫁の不在による不規則な生活によって前立腺やら何やらが悲鳴をあげたらしい。僕が「ま、あれね、とりあえずパンツをしっかり洗って、医者のいうことを守って生活することだね…。チンコにはなにより清潔だよ…」と言うと、アライの煙草を口に運ぶ仕草が止まる。「…」「ど、ど〜したのアライ君」「実はさ…」マンションを出ていくアライ嫁が二人の思い出のつまった洗濯機を持っていってしまった、だから満足な洗濯ができない、洗濯機を買おうにも嫁の借金清算で貯蓄を使い果たしてしまって預金残高はゼロなんだ、とアライは寂しげに言った。


 洗濯機か。僕は、アルマーニから財布を取り出して、「生活力のない僕にはわからないけれど最高の洗濯機はいくらするかな?十万?二十万?とりあえずあるだけ渡すから自由に使ってくれ」といい、中にあった紙幣を枚数を数えずに渡した。アライが「ここまで払ってくれるのならついでに家賃を払わないか、俺のマンションで一緒に暮らそう。ルームシェアだ。それに…」と切り出したが、絶対にいやだ、僕は彼の声を遮るようにして居酒屋の姉ちゃんを呼んだ。「ねえちゃん、おあいそだ!」声は、かすれていた。