Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

私の異常なお見合い・ 怒濤篇 または私は如何にしてナゾナゾ教団の罠に落ち、ピラミッドでED治療をするハメになったか

たった。たちました。


たった、つってもクララでも、ガンダムでも、あっしのつまらねえインポでもなく、お見合いから一年たった。お見合い相手のシノさんは、25歳戦国マニア西軍派趣味コスプレ、今読んでいる本は「もういちど読む山川日本史」のEカップ、コスプレネームはノッピー☆。一周年というわけでもないけど、シノさんが山に登ろうと言い出した。冬山を?何をたくらんでいるんだ?財産(500円玉貯金)か、地位(課長)か、名声(町内会会計)か、とうとう本性を現したな、大自然という密室でさては…、やらせはせん、やらせはせんぞーって藤沢駅南口夕方のミスタードーナツで疑心暗鬼、ストローをぎりぎりやっている僕の目前で「他の人も一緒の楽しい山登りですうー」とシノさん。疑って悪かった。反省してまーす。


シノさんと会うのは久しぶりだったりする。


初詣。黒装束のシノさんと「その袈裟はなんですか?キュアーのロバート・スミスですか?」「これはゴスでキュアーはコスプレイヤーのコミュニティサイトですうー」なんてやってる鶴岡八幡宮からの帰り道。ゴスなシノさんが突如、ノッピー☆に変身し、オヤカタサマー!オヤカタサマー!一人騒然。「萌え萌えなZAIMOKUがありますうー」「わー確かにこれは粋だねえ」正月アートを施したナイスな材木。粋だねえ。洒落ているねえ。うん確かに。だがシノさんの騒ぎっぷりが常軌を逸し、その場を離れようとしないので、どうしたの、尋ねると、「オヤカタサマー!モウロクですかー!このホモっぷりがわからないのですかあー」。目に涙が溜まってる。大丈夫か。ハゲヒゲ親方と若い弟子が手に手をとり、手じゃないものもとりあって、ひとつの芸術をつくりあげる、合戦にむかう戦国武将と小姓そのものじゃないですか、ウンヌンカンヌン講釈が始まったので、僕、逃げ出して、以来。


 たまたま街中で会って、コーヒーとドーナツに釣られてミスタードーナツへ連れ込まれ、登山の話を持ちかけられたってわけ。「なんで登山なの?」」「戦国バサラの新作のためにプレステ3を買いましたあー」「君はシャア・アズナブルという人のことを知っているかな」「最近なにしてましたー」話がかみ合わない。一生かみ合わない。「最近は天井に登ったり、床下にもぐったり、鼠の死骸を処分したり、音楽に合わせて踊ったりしてましたね」「さすが毘沙門天の生まれ変わり…」毘沙門天って何をやった人なのだろうか…、頷きながら歴史の彼方に想いを馳せたり、思索したりしているうちに登山が決まっていた。 「なんで登山なのですか」訊くと、「キミは私が何を考えているか興味シンシンみたいですねー」「会話が続かないので訊いてみただけです。いいです理由は。もう」「理由もわからないまま山を登るなんて…ゴクリ…刹那に生きる戦国武将みたいですう…」こうして僕は、理由もわからないまま、高尾山に登ることになったのだ。


にがつじゅうさんにち、どようび。たのしみにしていたやまのぼりがちゅうしでぼくはすごくざんねんです。きょうはぼくのたんじょうびだけど、みんなわすれているみたいです。たんぽぽぐみ、ふみこふみお。寒波、襲来。登山、延期。で翌日、日曜、朝。天井観察、プリキュア鑑賞、慌しく日曜の午前を過ごしているとレロレロレロ、電話がなった。シノさんだ。「渡したいものがあるので今から会うのですうー。登山の理由もお話ししますうー」。


FEBRUARY 14。ははあ、あれね。僕は超忙しいんだ、今日はお会いできないなあ、今だって電話をしながら冷蔵庫を開閉しているくらいさ、はっは、おっと生姜切らしているなあ、買いに行かなきゃいけないなあ、しょうがない、外出するついでに会いましょうか、ついでついで、ま、山登りの理由も興味ありますし、正味な話、あ、しょう油の賞味期限切れているなあ、新調しないとなあしょう油、そういうわけで、お猪口にカップ酒を注いで、カッと飲み干し、おろしたてのブリーフ、ポケットにはバイアグラ、種子島の弾丸の如き初速で家を飛び出したのでございます。見せてもらおうか、本命チョコの性能というやつを。


 とりあえず生ビール。呼び出しておいて約束の時間に遅れるたあ、ふてえやろうだ、こちとら生姜も買わず、しょう油も手に取らず、一目散に飛んできたっつーのに、って待ち合わせの居酒屋でごぶごぶ酒、飲んでいるとシノさんが。ドールのイベントの撤収が遅れてしまったのだという。背負った楽器ケースにはドールが入っているのですね、ツッコミいれないほうが身のためですね、わかります。中ジョッキ追加。


 シノさんは席につくなり「よしもとばななって知ってますかあ?」なんて言う。知ってますかっておいおい、馬鹿にすんな、ばなながデビューした当時の僕の現代文の成績は「5」だぜ、十段階で。あまり詳しくないので、「あのころ、よしもとばななはきららかおりと人気を2分した女流作家でね」つって誤魔化している僕の目の前にといって一冊の本をテーブルに置いた。中ジョッキ追加。


『光のアカシャ・フィールド」 よしもとばなな×ゲリー・ボーネル 副題 超スピリチュアル次元の探求』

光のアカシャ・フィールド 超スピリチュアル次元の探求

光のアカシャ・フィールド 超スピリチュアル次元の探求


…。


 それから、この本が山登りの理由ですと落ち着いた口調でシノさんは言った。中ジョッキ追加追加。「どうしたのこの本?」「虎おばさんからいただきました…」「えー!」虎おばさんとは昨年の夏、謎の宗教団体へしつこく勧誘してきた要注意人物(http://d.hatena.ne.jp/Delete_All/20090628#1246199310 )。心のまずしい、中年の女。おお、いやだ。「おばさんがいうには、戦国武将も占いや超常現象を活用したらしいですよオヤカタサマー!」「ああ…そうなの…」悪寒。「それで超常現象に詳しいおばさんの知り合いたちと高尾山に登ることになったのですうー。今日はこの本を貸してあげますうー」いらねーよ。中ジョッキ追加。


 夜、家に帰った僕は付箋の貼ってあるページを開いていった。

グリーンレイで読める太古のディスクが発見され、人々は真実の歴史を知るようになります。
ボーネル ディスクの歴史は、一万三千年前に終わっているんです。でも、それ以前の歴史は記録されています。

よしもと 何でそこで終わったんですか

ボーネル そこで人間の意識が合一から二元性にシフトしたからです。人々はそのときにテレパシーの能力を失いました。 

別のページ。


マチュピチュは黄金の巨人たちの神官たちが棲まう場所だった
よしもと 巨人たちの大きさはどれぐらいなんですか

ボーネル 大体4〜5メートルです

よしもと 微妙な大きさですね

ボーネル スラムダンクができます


 …眩暈がしてきたので僕は本をとじた。シノさんからメール。「虎おばさんのサークルの名前がわかりました☆アセンション登山セミナー。高尾山登山は来月!おばさんがここだけの話って教えてくれたのですけど高尾山ってピラミッドなんですって!春日山もきっとピラミッド!ピラミッドでキミの病気も完治ですうー!」シノさんその名前は…。こいつはくせぇッー!怪しいにおいがプンプンするぜッ――――ッ!! あれ。シノさん、僕のチョコレート、どうしたでせうね?僕は怪しい本の裏表紙に僕を悩ませる病名を書いた。夜を埋めるように、静かに、寂しく、ED。