Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

屋上へ行こうぜ…と僕は言った。


 今日、総務部長にきかされた話があまりにも酷かった。酷いにも程があった。酷さでも許されるものと許されないものがある。今日の話は口に出すことを許してはいけないものだと僕は思った。


 震災の話だった。総務部長は震災後の電力不足に乗じて一儲けを考えていると切り出した。話を促すと、家庭で出切る画期的な発電を考えたと言う。しかもそれは流通している部品で作れるほど簡単な仕組みで、誰も気付いていない発想の転換の産物なのだと総務部長は言い、「コロンブスの卵だ」と胸を張った。

 興味がないので「頑張ってください」とだけ言い、立ち去ろうとすると、総務部長は、「発明が盗まれないように設計図はカバンのなかにいれて持ち歩いている。興味がないかね」と聞いてもないのに続けるので、仕方なく、どういう、発明なのか、教えて、ください、暑いので、手短に、と感情のない機械のような口調で質問すると、教えられない、と言いやがる。「特許でもとってください。では」「いや、特許を取ろうとすると必ず大手企業や大学が先に取っていると嘘をいってきて弱小の私の手柄を横取りするんだ」いや、それは普通に先行されてるだけじゃね…。付き合いきれん、呆れていると「震災復興の手助けがしたいんだ」と総務部長は言う。その心がけやヨシ。しかし、ここからが酷かった。


 総務部長はいう。「今回の震災から我々は立ち上がらなければいけない。私が発明をはじめたのもそのためだ」「そうですね」「今回の震災でたくさんの人が亡くなった」「そうですね」「地震がくるのは約束されていた。地震は腐ってしまった日本を清めるために起こることが約束されていた」「はい?」「亡くなった人は前世でこの国を良くするために犠牲になる約束をした人たちだ」おいおい…。


 「部長、何言ってるんすか?」「だから犠牲になった人は日本をあるべき姿に正すために前世で約束をしたのだよ」はあ?「…」「だから生き残った私たちは」「それどこの新興宗教ですか?」「尊い犠牲になってまであるべき姿に正そうとした遺志を継がなければいけないんだ」頭痛くなってきたので、整理すると、部長がいうには今回の地震は約束されていた。地震は日本を正しくするために起こった。犠牲になった人は前世で犠牲になることを約束した人たち。だから私たちは意思に従って日本を良くしなければいけない、だそうだ。確かに日本は腐っているもんね、ってそうじゃなくて。いろいろ突っ込みたいところはあるが、許せないのは、思わぬ形で命を落とした人たちのことを、犠牲になることを前世で約束、了解していた人たちと言い切ったことだ。失礼だ。キレたね。僕は。軽く相手の胸を押して、

ふざけたこと言ってんじゃねーぞ、おいコラ。

 気付いたら言ってた。総務部長も僕が突然キレたので当惑してた。そりゃ当人としては本気で良かれと思って行動しているのだから、ま、戸惑うわな。最近キレるのが早くてイヤだけれど、許せないものは許せないし、怒るときには怒らないと。なんだか、そのあと会社で僕のことをいろいろ言っていたようだけど、他部署だし、ああいうことを言っちゃう人にどう思われても僕はかまわない。


 総務部長の言動は、新興宗教か何かの思想団体の影響なんだろうなと推察している。どういう思想を持つのかは個人の自由だけれど、言葉にしてはいけないものはあると僕は思う。明日以降も、彼があの失礼な話を誰かに話続けるようなら、どこの宗教団体だか存じ上げませんが、本当によろしい教えをされていらっしゃいますね。ふざけんな。コラ。どこの宗教だろ。マジで。

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