Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

キャバ嬢の品格

 キャバクラと耳にするだけで条件反射的に「金の無駄」と言ってくる人間がわからない。無駄と思う人間もいるのなら、一般人にとってはただのウンコがスカトロ愛好者にとっては黄金であるように、無駄ではないと思う同数の人間が存在する可能性もあるわけで、個人の自由や価値観をないがしろにして口に出してしまう思考や欠落した想像力が俺には理解できない。傲慢だろそんなの。しかも面白くない。そういった現実のつまらなさを忘れるためにキャバクラに行く俺に、追い討ちをかけるように、キャバクラに通う金があったら私と飲もう、と究極につまらないことを言ってきやがるバカがいるから、つまらなさから脱出するための俺のキャバクラ通いが新たなつまらないヤツらを孵化させているのかも知れず、そんなキャバクラ通いと人生のつまらなさの因果関係は「鶏が先か、卵が先か」の因果性のジレンマに似ている…なんてつまらない考えを俺のなかで孵化させているのだから、俺自身が知らぬ間につまらなさの因果に捉われていて嫌になる。クソ。

 店の外でキャバ嬢のようなたいして素性もよく知らない人間と会う危険性を指摘するのならまだ理解できる。キャバ嬢の仮面を被った凶悪なシリアルキラーに誘われたワンルームマンション、手足を拘束され猿轡をかまされた俺が、潤滑剤を塗りたくられた可愛い可愛い可愛い肛門を沖縄産いぼいぼゴーヤで拡張されペニパンで三三七拍子のリズムで突かれた挙句、すぱっと頚動脈を切られるリスク。俺のカラダは浴槽で丁寧にバラされ、薄くスライス!シュリンプ・サラダのとなりに生ハムとして盛り付けられシリアルキラーの友人のキャバ嬢たちに振舞われる。かつて俺であった生肉は赤いゼリーによく似てプルプルの若い女の舌の上に乗せられ…ムハーッ!それはそれで最高だけどな。


 まあ、とにかくキャバクラを金の無駄をいってくる人間の根拠が、たいてい、女の子は仕事で店に来る男に本気になるわけがない、そんな女の子に熱をあげて金と時間を費やすのはナンセンスだ、という恐ろしく薄―い人生経験に拠った根拠と、結果と効率を重んじ、無駄や余興を軽んじる姿勢とが俺をうんざりうんざりうんざり退屈にさせるってわけ。ラブプラスのやりすぎか?女体に触れろよ。はっきり言うぜ。そんなのわかってるっつーの。俺たち俺がキャバクラで女を口説いているとき本気で口説けるなんてこれっぽっちも思っていない。俺らの言葉は始まらない関係へのレクイエムだ。金の矢で射られたアポローンの如き執念で口説いているマヌケもいるかもしれないが。俺は思う。恋愛、異性との関係は贅沢品ではなく必需品なのだと。すこし運悪く、手元にないのならインスタントな代用品するしか生きる道はないのだと。


 キャバクラ嬢と遊園地に行ったことがある。名前は覚えていない。まあ、そんな間柄。空白の休日を埋めるためのインスタントな関係。遊園地の前で待っていた俺を驚かせたのは、女の子が一人ではなく、二人でやってきたことだ。<3P!>と素直に喜ぶ純朴な俺は20世紀に滅亡していたので、いまどきは品格って言うのか?その『二人で行けば相手も喜ぶし金も出してくれるよ』と言っているような笑顔と品性のなさ、いやしさに幻滅した。こいつらには愛が必要だ。俺は祈った。神様なんて信じちゃいないけど。こいつらと、俺のいやしさが推進力になって、いつか、俺たちが本当の愛を見つけ出せますように。俺の前を若い二人が歩く。賑やかに。神様なんて信じちゃいないけど。俺は祈った。こうして俺が祈っているぶんの百分の一、いや、千分の一でいい、こいつらが俺のことを思ってくれることを。互いのための祈りが魂のあいだを浮遊するのなら、それがインスタントだとしても、素晴らしいだろう?


 ジェットコースターに乗った。二人が並んで座り、そのうしろに俺がひとりで座る。ありえない。二人の料金を払ったのは俺だ。ありえない。面白くない。俺の怒りに同調するようにゴゴゴ震えながらジェットコースターが空にむかってあがっていく。それから一気に滑り出した。落ちる。猛スピードで。風、風、風。女たちは叫んでいるが何も気づいていない、俺が今この一瞬だけこの世界とこの世界がもつ退屈な鶏と卵の因果とキャバ嬢の品格から切り離されていることに。そして風のなかで気付く。愛を獲得するために、人生に、無駄なものなど何もないのだと。


 もちろんこれは俺が結婚する百年前の話だ。