Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

自己都合で退職した元同僚が想定外の助けを求めてきて驚いた。


(「自己都合で退職した元同僚が半年間のプー経験を売りに在籍時以上の待遇を求めて復帰を希望してきて驚いた。」http://d.hatena.ne.jp/Delete_All/20120612#1339503482
のエピローグです。)


 僕は小さな食品会社の営業課長。一年前に「自分探し」を理由に自己都合で退職したゆとり世代の元同僚、自称必要悪君から、折り入って頼みたいことがあるという連絡を受けた。自己都合での退職後に在職時以上の条件を求めて復職を申し出てくるなど、いろいろあったが、親切心というのかな、ボランティア精神というのかな、少年期にボーイスカウト活動で養われた、そういう種のものが僕のなかで湧きおこってきて、まあ話を聞くだけならと場末の焼肉屋で会うことになった。


とりあえず中ジョッキ。乾杯。必要悪君は今夏から務めはじめた会社をやめたと言う。理由を尋ねると一ヶ月も働いているのに夏休みをくれないからとクールなドヤ顔で言う。やれやれだ。「試用期間とか言われても困るっすよ」「雇う側も、このご時世だし実際の仕事ぶりを見ないと難しいんじゃないの?」

試されていると思うといい仕事できないっすよ。本気でないっつーか。本気出したくないっつーか。肩書もないし。テキサスレンジャーズがダルビッシュを試しで雇いますか?ガチっすよ。いきなりローテーションでしょ。任されて、初めて、百五十キロのスピードボールが出てくるんですよ。」ワイルドだぜ〜。中ジョッキ追加。


「オリンピック見てなかったんすかね?」「なんで?」意味がわからない。「俺ら世代っすよ。実力でメダルを取ったのは。たとえば課長世代でメダル取ったのは室伏だけじゃないすか。ビジネスも一緒っしょ。年齢や経験で選手を選んだら五輪選手団は老人ホームっすよ。会社は老人ホームっすか?」こいつだめだ。ゴーホーム。中ジョッキ追加。


「子供は順調?」必要悪君彼女のお腹のなかにいる子供の話に変える。「なんかリスク高くないすか?」「どういうこと?」「リスクが高い感じです」と答えになってないことを胸を張っていう必要悪君。「は?」「だってそうじゃないすか。見たことない子供のために、夏休みももらえずに苦しんでるんですよ俺。」そーじゃなくて。「自分の子供だろ?」「分からないじゃないですか、本当に俺の子供なんすかね?毎晩LINEで元彼と話してますよ、あいつ。そーいう状況で俺の子感なんてアガッてこないのが普通でしょ。毎晩DNAを分析してくれるアプリとか探してるんすけどね」「彼女を信用してやれよー」と感情を遮断して言ってやると「信用してますよー。課長のことは。課長がお腹の子の親じゃないのはガチですから。」付き合いきれん。中ジョッキ追加。


「で、折り入って頼みってなんだよ。」本題に入る。早く家でドラクエやりたい。昨日宝箱モンスターに殺されたままだ。「折り入って、じゃなくて、ワリーって言ったんすけど」「だからいいよ、何だよ」疲れる。「離職票もらえないすか?」「ウチの?」「そっす。課長の力で。ムカシのヨシミで」「ムカシのジョーシだけどな」直近の会社はどうしたんだ?「つか、直近の会社はくれそーにないっす。夏休みくれないレベルっすから」「わかったよ。俺の方で総務に頼んでみるよ。でもどうなんだろ。ウチ辞めてどれくらいよ」「1年っす。課長に力があればもっと近い時期になるかも」無理。


 「離職票のこと詳しくないけど、君もさ、それiPhoneだろ、それでさあ調べたりしろよ自分の問題だろ?」「課長わかってないすね。これサムスンっすよ。ギャラクシー。韓国の。尖閣諸島で揉めてるけど、少女時代ファンなんで、そのへん個人的感情抜きでビジネスライクに割りきってるっす。」「島違うぞ。恥かくとかじゃなくてヤバイから島の名前はキチンとしたほうが」「知ってますよ。あちらの国では別の名前なんすよね。でも俺のアイデンティティは日本ですから!尖閣以外の名前で呼びたくない」。もういいや。


「直近に務めていた会社から先ずは辞職表もらえるようにしなよ。ウチのほうは俺が頼んでみるから」「無理っすよ。」「大丈夫だよ、まともな会社ほど君みたいな人間とは早く縁を切りたいはずだから速攻で対応してくれるって。」「絶対ムリっす。」「何でだよ。」「まだ辞めてないから。実質辞めてるけど」えっー?中ジョッキ追加。「これじゃ自己都合の退職になっちゃうじゃないすか。課長んとこ辞めたとき、自己都合になってしまって後悔したんすよ。あのときももっと権利を主張していればよかったんすけどトラブりたくなかったんすよ。」待て待て。


 「離職票って言ったよな。今、どういう状況なの?「実質辞めてる」って何だよ。」「会社都合の退職になるために二週間前から出社していません(キリッ)!」ヤバイ。キレそうだ。ごめんなさい。こんなときどんな顔をすればいいのか、わからないの。精神安定のおまじないを唱える。お土産みっつ、タコみっつ。お土産みっつ、タコみっつ。お土産みっつ、タコみっつ。ミッツマングローブ。バカだ。バカだ僕も奴も。「もう連絡してくんな」「俺みたいな必要悪はなかなか会社を見つけるのがしんどいっすよ」「いいからもう連絡するな、バカ」「バカ?訴えますよ」「いいよ」「マジですか」「マジ」


こうして僕は自称必要悪君との縁を切った。二度と彼に対する親切心がわかないよう、彼のムカつく言葉をここに記し戒めとしたい。

「課長と同じ年齢のムロフシは世界で戦っているのに、いいんですか?課長は神奈川県で」


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