Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

僕のマスオさん生活が3ヶ月で終わった。

 「君はよくロック、ロック、ロックンロールと口癖のように言うが、あれはロックや若気の至りというよりも…」朝の食卓、同居してる義理の父は僕に言った。穏やかな声だ。「小便臭い子供のやることではないかな?婿殿」。師走。泥酔の挙げ句の狼藉、酒バイオレンス。の連続。どうしてがぶがぶ酒を飲むと障子に北斗百裂拳をお見舞いしたくなるのだろうか?「婿ではありません」と突っ込みをいれる空気はなかった。「確かにそうですね」僕は言った。妻と義母は時代劇の録画を観ながら成り行きを見守っている。胃が痛い。それから、義理の父は予め決められた場所に言葉を置くようにして言った。「早々に、出ていってほしい」。「わかりました」。障子に開いた孔から射し込むお日様が眩しかった。


 こうしたやりとりを経て僕は妻の家を出ることになった。マスオさん生活は3ヶ月で終わった。誤算がふたつ。ひとつは知り合いの不動産屋の扱っているイイ感じの物件がちょうど空いていたこと。ラッキー。もうひとつは妻。妻が実家に残ると言い出したことだ。「今の状態で家を離れることはよくないと思いますー。先ずはキミがしっかりと立ち直らないと。性的な意味でも」こうなると妻はテコでも動かない。仕方ない。僕には患っているインポテンツのように頭を垂れてうなずくしか選択肢はなかった。こうして僕ら夫婦は別居生活をすることになった。「ちゃんとしないと離縁ですよ」妻の言葉が重い。

 隣駅から徒歩五分。築20年の2DK。何もない部屋には、わずかな私物と妻が寂しくないようにと持たせてくれたクマの「ティー太」。野良猫の鳴き声が笑い声に聞こえる。部屋に荷物を運び入れてからエアコンが無いことに気づいた。寒い。小便が近くなる。


(カーテンを取り付けた)
 
(ホームセンターで家具を買ってきた)

 トイレで放尿しながらふと我にかえり義理の父を激怒させた原因について考えてみる。不思議なもので人の怒りについては冷静に考えられるものだ。僕は追い出されるほど怒らせるようなことをしただろうか。障子を破いただけのはず。はて。義母の名前は障子だったか?冷えきったトイレの水洗便器からぼぼぼぼと情けないサウンドに遅れて立ち上ってくる湯気は僕の頬を撫でると同時に忌々しい記憶を蘇らせた。思わず声が出る。

「あっ」

 あの家族が寝静まった深夜。泥酔した僕は突き動かされるように障子という障子に拳を突き立て、それから暴走したエヴァ初号機のごとき機動性を発揮して洗面台の上に飛び乗り、白い洗面台に向かって放尿を敢行したのだった。翌朝、顔を洗おうとして蛇口からお湯を流した義理の父の鼻を僕のアンモニア臭が直撃した。そのときの彼の気持ちは想像にかたくない。脱糞でなくてよかったという安堵と、せめて水を流しておけば、という後悔だけが残る。


 アラフォーの一人暮らし。「しめしめエロいギャルを連れ込んで…」とはなりそうもない。今のところ毎日夕方になると妻は部屋にやってきて、夕飯を済ませては実家に帰っていく。僕は酒癖の悪さを直さなければならぬ。さもなくば僕は殺してしまうだろう。自分や他者の命や生活を。殺したくない。壊したくない。夜、部屋にいると妻や僕の家族たちを乗せて走る江ノ電の音が聞こえてくる。その音を別れのマーチにはしたくはない。まだ。


あけましておめでとうございます。今年もよろしく。


ツイッターやってるよ!http://twitter.com/Delete_All/


電子書籍も書いてたりするよ!

恥のススメ ?「社会の窓」を広げよう? (impress QuickBooks)

恥のススメ ?「社会の窓」を広げよう? (impress QuickBooks)

  • 作者: フミコフミオ
  • 出版社/メーカー: インプレスコミュニケーションズ/デジカル
  • 発売日: 2012/03/06
  • メディア: Kindle版
  • 購入: 1人 クリック: 60回
  • この商品を含むブログを見る