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Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

進撃のXPサポート切れ対策

日記

 ウインドーズXPのサポートが切れてウイルス感染や個人情報漏洩の危険性が高まり、新しいパソコンやソフトを導入できない方々が大騒ぎしているようだけれども、プライベート、会社、共に新型のウインドーズビスタを使っている僕には関係のない話だ。と思っていた。世間の大騒ぎに気付いたウチの会社の上層部も、いまさら、XP問題に慌てはじめ、2時間の討議の結果、対策担当に任命したのが僕。その理由が「iPhone持っていてなんとなく詳しそうだから」と聞かされたときの絶望で、眠れない夜が続いている。


 とはいえ本来、営業マンである僕が当該問題に詳しいわけであるはずもなく、また、会社は創業以来初の赤字、レッドゾーン。設備を刷新することは不可能。自然、僕ができる対策としては、ウインドーズXPパソコンでのインターネット接続を禁止することしかない。

 

 朝礼でラジオ体操の模範演技を終えた口で、息も絶え絶えにその旨を告知した。反応は皆無だった。いつも思うのだがラジオ体操を終えたあとのクールダウンタイムに業務連絡を聞いている人間はいない。効果は薄い。僕は仕事の合間に時間をつくってはグループごとに啓蒙する作戦に出た。

 

 パソコンやネットの知識はゼロなのでとにかく危機感を煽る作戦。グループの特性にあわせた危機を提示すればいい。十数年営業マンとして、みなし労働時間という厳しいシステムで生き馬の目を抜いてサボってきた僕には楽勝すぎる。

 

 まず、本社でブラブラしていた若手社員男女をつかまえた。若者にとっての危機を考慮して、僕は「XPでネット接続することは、避妊なしで性交するようなものだ。大変リスキーな行為なのだよ」と注意した。

 

 すると2人は、目線を床に落とし、それから横目で互いを思いやるように足元を見つめ合ってから、「それくらいなら別に」と鈍い返事しか返してこなかったので僕は絶望した。彼らの個人情報が漏れようとしったことではない、いや、むしろ漏れてしまえ、と僕は憎悪の炎を激しく燃やしたのである。

 

 そのようにしてリスキーな若者を見捨てた僕は、同世代の同僚に啓蒙活動をした。危機感を煽るのだ。冗談交じりに「XPでネット接続をすることはさ、まあ、みんなには関係ないと思うけど出会い系サイトやハッピーメールにガチの本名と本アドレスで登録するようなものだよ。もし未成年的なアレで捕まったら芋づる方式でアウトだよ」といったら、いや、でもネットに接続しないと仕事にならないよ、という普通の反応が返ってきたので僕は安心した。やはり、持つべきものは団塊ジュニア世代だ。うち一人は、「言われて気付いたけれどGメール本名だったわ」と呟き、影になっていった気がするが彼のことは忘れることにした。

 

 手ごたえを感じた僕は会社の老害、もとい上層部への啓蒙活動に手を付けた。彼らの危機とはすなわち既得権益が破壊されることだろう。僕は上層部の会議の前に時間をいただき、XPの危険性についてこう喩えた。「XPでインターネットにつなげることは、愛人にご自宅の電話番号を教えるようなものです」僕はそこまで言い切ってから周りを見渡した。興味があるらしく全員の目がこちらを見ている。

 

 それから僕が「考えてください。愛人からご自宅にいる奥様へ直接電話が入る事態を。そこからはじまる地獄絵図を」。僕が提示したアルマゲドンに会議室の空気からは音が喪われ、つんとして耳が痛いほどでした。「君」と上層部の人が僕に声をかけたので偉そうに顎を動かし発言を促すと「むしろ家内と別れられるならそれのほうが」とか「妻が死んでいるから我が家は留守電しかない。むしろ帰ったときにメッセージが残っていたらありがたい」とか老人たちが口々に言い始めた。僕は、危機感を煽るどころか、むしろ、希望の灯りをともしてしまったのだ。完全に僕は沈黙した。このように僕の啓蒙活動はほとんど失敗に終わったのだ。

 

 我ながら恥ずかしいというか恥そのものなのだが「XPでネット接続するのは避妊なしで性交するようなものだぞ」と若手社員に注意しておきながら、その自分の文句と、若手社員男女の姿を繋げ、XPでネット接続することを想像してはスリリングな興奮を覚えている僕は変態かもしれない。それはいい。だが僕は変態であると同時に課長。インターネットの脅威から会社を守らなければいけない。今朝、強行策をとってみた。該当するパソコンのケーブルを引き抜いてみたのだ。仕事のトラブルがあれば個別に対応するつもりだった。

  

この昼休みまでに僕のところに届いたのは「LINEが見られない」「ヤフオクが出来ない」という幻聴ばかりで、仕事上の問題は一切起こっていない。《神の国に怠け者の居場所はない》と子供のころ神父様が仰っていたのは嘘だったのだろうか。僕にはわからない。ただひとついえることは、僕が営業に出ているうちに、何者かによって会社から与えられているパソコンがビスタからXPへと替えられていたことである。

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