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Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

新年早々私が受けた人生最大級の辱めについて

明けましておめでとうございます。新年早々、人生最大級の辱めを受けたので皆様にご報告したい。

「大江戸捜査網2015」を視聴しながら飲む酒より美味い酒を僕は知らない。新年。妻の実家でご馳走になるのが慣例になりつつある。しばらくして、具体的には大江戸捜査網でいうと長庵先生が凶刃に斃れたあたり、午後10時近くだと思うけれど、泥酔した義父が「そろそろ孫を…」などと極めてデリケートな話題を切り出した。

父親というものは娘の性交の成功を祈るものなのか、父親になったことがない僕にはわかるはずがなかった。静まり返るテーブル。義父、義母、妻、義妹、僕。それぞれの視線が、沈黙しているのもおかしいので何か言わないと…でも何を言えばいいのか…そんな思惑を持って交叉した。

皆の視線が僕に集まった。義父は70になる。孫を待ち望む気持ちはよくわかる。先日の妻の言葉が蘇る。「やっぱり、このまま子供がいなかったら寂しいかな」 僕ら夫婦は子供や妊活についてこの年末とことん話し合ったのだ。それで「出来たらラッキー」くらいのユルい妊活を選んだのだ。夫婦の関係をまず充実させようと。だからこそ義父の期待を破壊するかもしれなくとも僕は言わなければならない。勃たぬものは勃たぬと。ミッション・インポッシブルだと。しかし躊躇してしまう。あなたの娘では勃たないと解釈した父親が「よくも!」つって逆上し、刃傷沙汰に発展したらどうしよう、そんな迷いが生じたからだ。新年早々に不能アッピールする自分への哀れさもブレーキをかけた。

義母が僕に助け舟を出してくれた。「まぁまぁこればっかりはなかなか思い通りに行かないわよねぇ。お父さんたら」義母はいつも僕の味方だ。実際、思い通りにイケるのは男優くらいのものだ。僕ら夫婦の妊活の詳細や進捗についていちいち報告をしているわけではないが、僕の不能については妻の家族は6親等まで知っている。

義母はそれから「いざとなったら添え木でも当てればいいのよ」と続けた。助け舟が炎上するビジョンが脳裏に浮かんだ。盛り上がる食卓で僕ひとりが陰になった。妻が話を逸らそうと「私にもお年玉をくださいな」と僕にいうと、えっ、お前、旦那から、お年、玉を貰っ、ていない、のか、としどろもどろの義父が騒ぎ出して収拾がつかなくなる。勃たない、添え木をあてない、お年玉をケチる亭主。そこまで言われて黙っていられようか。黙っていられる。めんどくさいからね。

「今年は治るといいのだけど」つってうんうん悩みながら席を外し、しばらくして戻ってきた義母は食卓の上に何かを並べだした。台所から持ってきたらしい、爪楊枝。ストロー。割り箸。菜箸。カマボコの板。食べたばかりのカニの殻。ナルト。嫌な予感がした。僕は義母にこれらのアイテムの意味を訪ねると「家庭にあるもので添え木になるものがあるかなと思って」と気さくに答えた。

これを僕自身に当てろというのか。家族愛に涙があふれそうになり「爪楊枝、このレベルのサイズだと思っているのか!ストロー、長さは合格だが直径が足りんわ!割り箸、割って使ったら痛いよ!菜箸、外人じゃないぞ!カマボコの板、確かに僕のはカマボコくらいかなージャストサイズ!」と僕は心の中で叫んだ。心の中、のつもりだったけれど、泥酔のあまり口に出ていたらしく、気がつくと静まり返った部屋はしんとして耳が痛いほどでした。カニの殻とナルトについてコメントをしなくて本当に良かったと思う。

「ま、そこまで言うのなら今年は期待出来そうだな」と義父が言うのを僕は聞いた。屈辱を晴らそうとして、片付けの手伝いをしている義妹のレナさんのミニスカートから伸びる生太ももを凝視してみたけれど、例のごとく僕自身が反応することはなかった。