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Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

あたらしい朝(ブログ決別宣言あるいは日記回帰宣言)

日記

 ついつい忘れてしまいがちだけれど、何もない普通の毎日が素晴らしいのだ。価値があるのだ。アクセスとマネーと自己承認願望を満たすためだけに、どこの馬の骨かわからぬ男女が書く「仕事術」「恋愛論」は僕には無意味だ。僕は何気ない日々を陰々滅々書き連ねていこう。咲き誇るヒマワリになれなくても構わない。僕は墓に供える菊でありたい。お浸しにして食べても美味しいし。

 

 今朝は枕の臭さで目が覚めた。酒をガブガブ飲んで床に入るとドブのような臭いがする。何らかの汚染物質が出ているのだろうね、枕カバーはぼろぼろだ。空気を入れ換えるために部屋の窓を開ける。男らしく網戸も一緒に開ける。流れ込んでくる朝の冷たい空気が僕を覚醒させる。

 

 午前6時。薄明るい空の向こう。遥か遠くの町に住むお袋は元気だろうか。すっかり弱くなってしまった足腰にこの寒さはつらいことだろう。つらいのは寒さよりお魚くわえた野良猫を追いかけ回していた過去の姿とのギャップだろうか。ずいぶん長いことお袋に会っていない。空よ。神よ。答えてくれ。こうしてお袋のことを想うとき、罪を犯しているような気持ちになるのはなぜだ?神は答えない。地の底にいる人間の声など聞こえないのだろう。歩いて数分の実家に住むお袋とは丸1日も顔を合わせていない。

 

 仕事の方はおかげさまで順調だ。なぜ業績がいいのか、誰もわかっていないのに一抹の不安を覚えるが。与えられている仕事も変わった。営業開発に加えて企画・調査分析、リクルートまで任されるようになった。その仕事はひどく曖昧で、ひとことで職種をあらわすのは難しいが、あえていうとすれば《パフォーマー》だろうか。「なあ。俺はパフォーマーとして立派にやれているだろうか」。空を飛ぶカラスにつぶやく。

 

 キッチンから物音がした。寝食を別にしている妻が朝食の支度をしている。パートで働く妻の朝は早い。僕より10分早く家を出るために妻は僕より1時間早く起きている。化粧っ気のない顔を見せたくないという彼女の言い分を僕は信じる。

 

 朝食は平等に分担している。月火金土日が僕で、水木が妻。文系の僕にはわからないが16進数だとこのように分けられるらしい。「おはよう」「おはようございます」何気ない、幾重にもコピーされた朝のワンシーン。この平和で穏やかな時間を守るために僕は戦っている。

 

 気が付くと、キッチンが静まり返っている。物音は朝食に使った食器を洗う音だった。僕の朝食にはラップがかけてあった。LED電灯の白い光に照らされたラップは、死者の顔にかける白い布を僕に想わせた。

 

 尿意を催した僕はトイレに向かう。朝立ちしなくなってから十年近くになるだろう。《オペレーションアサダチ》を謳い、アルファ(瞑想)、ブラボー(薬)、チャーリー(運動)、デルタ(乾布摩擦)、あらゆる手段で復活させようとしたこともある。すべて歴史上の出来事になった。

 

 朝立ちは悪だ。必要悪ですらない。特に小便をするときのそれは邪魔以外の何物でもない。便器の前に立つスタイルだと、朝立ちで角度が付いているためそのまま射出するとK点越えしてしまう。そのため前屈になる必要がある。激しい朝立ちの場合(うらやまC)、上体を便器内水面に対して平行まで傾けねばならないだろう。超時空要塞マクロスのガウォークのように。

1/72 VF-1J/A ガウォーク バルキリー

 もしパートナーにガウォークで射出している姿を見られたら…破滅だ。便座に座るスタイルはもっと悲惨だ。射出口を下に向けなければならないが、哀しいかな朝立ちは上向き。そのまま射出すれば顔にヒットするか、壁にテレマークを入れることになるだろう。

 

 世間体を気にして「小便は座ったまま行う」とカミングアウトする男性を多くお見受けするが、上記の理由からほぼ不可能なので僕は懐疑的に見ている。貴女の立派なパートナーは便器の前で立ち、トイレ内の壁に飛び散るのも厭わず激しく放尿しているはず。そんな男とは即刻別れたほうがいい。

 

 朝立ちしなければ小便は自由自在。座り。立ち。ジャンプ。どのスタイルからでも的を狙える。僕がどのようなスタイルを採用しているか詳細は省略させていただくが、様式便器に正対して両手で掴み、鎮座するスタイルを採用している。ちょうどオートバイレーサーのように。

 

 朝立ちしないことのベネフィットばかりを書き連ねてきたが、欠点もある。色々弱っているので水圧が弱く、事を終えるのに時間がかかってしまうのが目下最大の欠点だ。僕は居酒屋のトイレに設置されている小便の勢いで雌雄を決するゲームで勝ったことがない。

 

 小便を終えてトイレから出ると同時に玄関のドアが閉まる音。妻が出かけた音。本当に何もない朝。ともすると虚無感にとらわれてしまいそうになる朝。こういう何もない朝こそが尊いのだと僕は信じている。SMAP解散のニュースがテレビを飾り、ジギースターダストが宇宙へ旅立っていった。聞こえるか。僕の、あたらしい、朝だ。

 

(この23分間で書かれた文章を【ジギー・スターダスト】デビッド・ボウイに捧ぐ)