Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

雇用情勢改善のせいで死んだ。

 嘘か真か選挙対策なのか一般市民の身ではわからないが総務省の発表によれば雇用情勢が改善したらしく大変迷惑している。僕は食品飲食業界の最低辺に棲まう下郎なのだが、本社だけでなく各事業所も人不足は続いていて、求人広告を打てども打てども人が集まらない。完全な売り手市場。ついでにワタミのせいで飲食業のイメージはよろしくない。ごくまれな反応に対しても「いい会社ですよ~。慢性的な人不足であっというまにどんなボンクラでも出世できるからキャリアアップに最適!」なんつー死にもの狂いの必死さを見せてしまい逃げられてしまう。

 

雇用情勢が最悪だったときはよかった。求人を打てば食品飲食業でもすぐに人が集まったからだ。日曜版折込求人広告を見てみるといい。目にとまるのは介護職とならんで飲食業。地獄なのは同じ求人が次の日曜もそのまた次の日曜も入っていること。当たり前だ。条件が同じであるなら状況は好転しない。ウチの上層部はさすがに同じ轍は踏まなかった。よかった上司がバカではなくて。ウチは上層部の指示のもと神奈川県の最低賃金905円からスタートして求人を出すごとに906円、907円、908円、909円、910円というふうに1円ずつ上げていった。バカではなく大バカであった。

 

人間というものは不思議なものでございまして、元芸能人がアダルトに転向するやいなやソフトから一気にハードコア方面に突き進むように、ある一線を越えると大胆になる。求人の時給も910円から1100円、1200円とホップステップジャンプ!それでも一向に人は集まらず、求人広告のサイズをアップしたため広告費が莫大な額となり経費アップアップ。人間とは常に他人の懐具合が気になって仕方のない美しい生き物でございまして、今勤めているスタッフ(時給905円)が当該1200円の求人広告を目撃して「なんで同じ仕事なのに、後から来る人間の方が好待遇なのだ!」と退職をチラつかせての本社テロを敢行。仕方なく既存スタッフの賃金をアップさせ、されど人不足は改善せず、ますますアップアップ。現場の壊滅的な状況のしわ寄せは営業職である僕にも押し寄せ、現場へ行かされ、マッシュポテトつくりからはじまり、業務用回転釜で数十人分の麻婆豆腐をつくれるまでに至った次第。

 

そして遂に長年の営業活動を経て内定をいただいた今春スタート予定の仕事を、《人不足を理由》に断ってこいと下命された。「フミコ課長のところに決めたよ」「本当にありがとうございます。貴社のご期待に応えられるよう必死に務めるのでよろしくお願いいたします」つい先月の微笑ましいやり取りが嘘みたい。スタートと思っていたらまさかゴールだったなんて。先方に電話で会社方針を伝えたら「課長、必死って言いましたよね。必死って必ず死ぬってことですよね」と温かい言葉をいただいた。きっつー。

 

今、菓子折りをぶら下げて向かっているところだが、どの面を下げて相手に会えばいいのか、僕にはわからない。ちなみに情報筋によれば営業管理職の求人が僕よりもはるかによろしい条件で出ているらしい。やってらんねー。敵前逃亡してー。このように底辺な環境においては雇用情勢が改善してもいいことばかりではないのである。(所要時間20分)