Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

働くのが怖くなった。

おかげさまで年明けから営業の一部門の責任者になることが決まっている。今は一緒に働くスタッフを選定しているところだ。ウッド調のオフィスでスターバックスを飲みながら充実した仕事。素晴らしい時間を過ごしている…といいたいが、因果だろうか、そんな気分にはとてもなれない。怖いのだ。新しい職場でも順調に立身出世していく己の才覚、ではなく、まあそれもないこともないけれど、誰かと働くのが怖いのだ。責任者になるのは部下に対して責任とある種の権力を持つこと。立場は人を変える。革命に成功したリーダーが今度は専制君主のかわりに民衆を弾圧するのと同じである。率直にいって僕は自分がセクハラやパワハラをやってしまいそうで怖い。ハラスメントで全てを、ローンを除いた全てを失うのが恐ろしい。欲求不満で衝動的。ありあまる猜疑心。僕は自分の中にあるハラスメントをやっちまいそうな資質を誰よりもわかっているつもりだ。ハラスメント環境やハラスメント上司しか知らない僕がクリーンな職場環境をこしらえることができるか。否である。ハラスメントを抑える自信もない。それが僕の恐怖の理由なのである。とはいえ会社という組織で働く以上、自分以外の人間との付き合いは避けられない。「どーしよー」と今、僕は社員リストを前に戸惑っている。僕と一緒に働いてもらうチームは僕を除いて3名。うち1名は夏から僕と働いている男性で、残り2名を選定している。男女平等及びセクハラ防止の観点から男女比は1対1が望ましい。だが対象リストの中には女性営業スタッフは1名しか存在しない。これがどういう悲劇かとご説明さしあげると、仮に当該女性スタッフを選んでも男性3に対して女性1となりよろしくないし、女性を選ばず男性4名とした場合はもっとよろしくない。女性の社会進出を阻むセクハラ野郎と糾弾されてしまいかねない。また、女性スタッフをチームに招聘した場合、女性Aと女性Bにまったく同じレベルの仕事を振らなければ社会的に抹殺されるし、仕事の依頼をする際も一字一句同じにしなければ差別的といわれるし、「お願いします」「頼むよー」「明日の朝まで」という受け手の聞き取り方によっては、性的な発言に聞こえてしまうフレーズは排除しなければならない。ソフトバンクのpepper君を導入し、彼を仲介して女性に仕事を頼めば、とも考えているが、女性スタッフの相手をニヤケ顔の機械に任せる非人間的職場環境と指摘される可能性が出てくる。もしかしたら人工知能やロボットの権利を蔑ろにしているAIハラスメント騒ぎになるかもしれない。僕の口臭は環境型セクハラに該当するし、目を合わせれば性的なまなざしと言われてしまう。セクハラにとどまらず上司と部下の関係性においてはあらゆる命令指示にパワハラ成分が観測される。「締め切りまでによろしく」と頼めば「真面目に生きているのにルーズな人間と想定されて心が痛んだ」「友達感覚な言い方それがもたらす近すぎる距離感にかえってストレスを覚える」と訴えられるかもしれない。何をやってもハラスメントに当たってしまいそうだ。ハラスメントマンへの変身を回避するため、まだまだ仕事量も少ないので当面はスタッフを増員しなくてもよろしいのではないか、とボスにお伺いをたてると「これは業務命令だからね。命令に逆らったら、わかるよね。わかるよね。わかるよね…」とインテリヤクザのような機械のような不自然に柔らかい口調で諭されてしまう。重圧で胸が苦しくなった。圧力を感じたが僕はパワハラと訴えない。ロボットだから。社畜だから。僕は己のハラスメント資質を認めつつも「パワハラセクハラモラハラ男にはなりたくない」という人間の心はまだ失っていない。ごっつぁんですスピリットでビール瓶やカラオケのコントローラーで部下を殴りたくない。ハラスJAPAN入りしたくない。僕はすべてを失いたくない。そのためにも「これだけをやっておけば絶対にハラスメント人間にならない」フレーズ&アクションの策定をお願いしたい。厚生労働省ならびに日本相撲協会にはそれをリーフレットにまとめて対象者全員に配布するようお願い申し上げる。さもなくば怖くて働けない。(所要時間21分)