Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

入社8カ月で管理職になるためにやったこと全部話す。

以前、この場で労働環境を整備するためにやったことを書いた。その冒頭で営業の責任者になるとサラっと書いていたが、今回はその過程について語りたい。

delete-all.hatenablog.com

この4月から営業開発の責任者(部長)になった。実は、入社する際、ボスに対して自分を高く売り込んでおり、それが少々ハッタリをかましたものだったので、試用期間中はいつクビになるか、ビクビクしていたが、万事うまくいったといえる。ラッキー!のひとことで片づけるのもつまらんので、昨年8月まで無職ときどき駐車場アルバイトの僕が、そこそこの規模の企業のそれなりのポジションに就くことが出来たのか振り返ってみたい。

僕はブラック企業に勤めていた。らしい。らしい、というのは僕自身にブラック企業に勤めていたという実感があまりないからだ。17~8年間ブログを書いてきてよかったことなどほとんどないけれど、無理にひとつあげるとするならば、読んでくれている人たちから僕の(かつての)職場がブラックではないかと指摘を受けたことだろう。ホンモノの一流ブラック企業は社員をマインドコントロールしているので、社員にブラックに務めているとは思わせない。実際、僕も仕事がキツイのは自分の能力が著しく劣悪だと思っていたし、当時一緒に働いていた同僚たちも同じだったと思う。

おかげさまで現在は本当にホワイトな環境で楽しく働けている。ちょっと気になるのはピュアな気持ちで仕事に向き合っている同僚が多いこと。そういう環境なので僕のように、仕事や上司に対して懐疑心を持っている人間は周囲から浮いてしまう。この「浮いている」が僕のストロングポイントだと気付くのにそれほど時間はかからなかった(昨年の9月くらいか)。

僕はブラックにいた経験をフルに活かすことにした。入社した当初、僕はリーダー(主任、課長)という立場を与えられ、ボスからは「キミのやり方で新しい営業チームをつくって欲しい」と言われていた。今の職場の同僚、特に若い人たちは、理想と現実的な目標を混同しているような印象があった。「高すぎる目標に向かってみんなでガンバロー」「夢がよりよい自分を形作るよー」みたいな気持ちのいい働き方というものを僕は信じられないし、信じない。薄気味悪っと思うし、ともすると高すぎる目標や夢は、その達成のむずかしさゆえに達成できなかったときに逃げの理由になることを前職で思い知らされてきた。例)前の会社「目標は売上対前年300%!」→「ダメだったけど、理想を追っている俺たちカッコいい」アホすぎる。

僕は、チームの目標を思いきり低く設定した。低くした分、細かく、そして多くの目標を設定した。営業活動開始時間や帰社目標時間を厳密に定めて、営業活動にかかわる最低時間@日を定めた。売上ノルマに直結する訪問件数や見込み客獲得数をプラスに評価するのは当たり前だが、たとえばノルマに直結しない、交通費の精算や事務作業にかける時間をどれだけ削れるかに目標を設定した。夢や希望はないが確実に達成できることの積み重ねを重視し、毎日のミーティングでチーム達成率を発表した。出来なかった目標はどんな小さなものでもその原因と対策を見つけるようにした。偶然も味方してくれたが、この積み重ね作戦が功を奏し、大型案件成約につながったのだと思っている。

それと同時に僕はチームで戦うことを重視した。繰り返しになるが今の職場の同僚は基本的に仕事ができる。ひとつの案件に対しても全力で取り掛かってくれる。ひとりで結果を出してくれる。ありがたいが僕はそこが信用できない。うまくいったときはいい。うまくいかないときが問題なのだ。信用できない。営業マンが、一匹狼であることをいいことに、「俺の仕事」といって仕事を自分ひとりで持ち抱え、よくわからない理由で失注する様を何百回と見てきた。ブラックボックス化してしまうのだ。それに全力で取り掛かるというのは、余裕がないというか視野がせまくなることにつながりかねない。その結果、クライアントへの提案がおろそかになることもある。

案件をブラックボックス化させないために僕がやったのは、案件に対して担当者を必ず2名置いたこと。その2名は固定チームではなく、案件ごとに組合せを変えた。目的はチームで戦っていることを意識させることと、組合せを変えることによりなるべく仕事に対する鮮度を維持すること、うまくいったときは成功体験を共有し、うまくいかないときは失敗の理由を明確にすることだった。すべてがうまくいっているわけではないが、失注した案件の理由は明らかになっているので、これから効果がでてくるはずだ。

3点目、報告の方法をあらためた。具体的には営業日報という慣習を廃止した(試験的に今年3月まで。結果が良好なためこの4月で廃止)。パソコンのフォームにその日の行動と結果を入力していくのだが、前の会社で何人も営業日報バカを見てきたので、ボスにかけあって廃止した。営業日報バカとは日報入力を仕事のすべてととらえたり、虚偽の報告をする人間である。たとえば、営業日報バカは「4月10日午前10時。海山商事の総務担当A課長と面談。前回訪問時に口頭で説明した提案Bの反応をうかがう。社内調整不十分を理由に今回の導入は見送られたが前向きな感触を得る」ともっともらしく全部虚偽の内容を報告するのである。面談もしていなければ、提案もしていない。「口頭で説明」なので物証がないうえ、前進も後退もしていないが前向きという謎の記載で上からの監視(「まあ、動いていないならいっか…」)をかわすのである。もちろんA課長は架空の人物である。無駄すぎる。

営業日報の全てを否定するわけではないが、あれを入力することがイコール営業の仕事ではないし、僕からみれば時間を無駄にしている側面が大きすぎる。さいわい、今は重要な報告は上がってくる環境にあるので、日々の細かい報告については、僕が週イチくらいの頻度でアトランダムにチームのメンバーを個々に呼んで、10分ほど時間をもらってヒアリングする方法を採っている。営業日報にかける時間を削減(30分)でき、その分を営業活動にあてることができている。8時間の所定労働時間のうちの30分は大きい。

以上3点を僕は変えた。ひとつひとつはたいしたことではない。これらだけが僕を管理職に押し上げたわけではない(大型案件を受注できたのが大きい)。ただ、新参者の僕が一気に行ったこと、そしてホワイトな環境をより良くするために行ったこと、このふたつについては達成感はある。そして何よりもホワイトな環境ゆえに安定している社内に変化を起こしたことをボスは評価してくれた。すべてブラック企業に勤めていたときに経験したこと、反面教師的に学んだことを活かしただけだ。その根底にあるのは、猜疑心と他人の能力への不信感である。3つの改革は、すべて誰も信用できないという地点を出発点にしている。短期間で他人を信用できない人間にしてくれたブラック企業には感謝している。いつまで今の職場にいるかわからないけれど、辞めるまでに、若いスタッフのヤル気を搾取しないような仕組みだけはキッチリとつくって、僕のような不信感の塊が生まれないようにしておきたいと考えている。(所要時間36分)