Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

入社8ヵ月で管理職になった僕が半年かけて断行した会社改革を全部話す。

今年の4月、「新しい風を入れてくれ」とボスに言われ入社8ヵ月で食品会社の営業部長になった。ホワイトな環境下で、健全で平均以上の能力をもった同僚と、気分よく仕事が出来ている。だが、大卒後ずっとブラック環境で働き続けてきた僕には、彼らの「仕事嬉しい!楽しい!大好き!」なスタンスは長所でもあるが弱点にもなりかねないように見えてならなかった。それならば、ブラック環境を生き抜いた経験を活かして彼らの力を最大限に発揮できる組織に変えてみようと考えた…とは社内的な建前で、本音は、出来るだけ楽に仕事をしたいだけである。仕事ってそういうものだ。 

部長になった前後に書いた記事。

労働条件の改善(固定残業代について/時短勤務の導入)

労働条件を改善するためにやったこと全部話す。 - Everything you've ever Dreamed

方針の策定(『営業に携わる時間をつくり小さい目標をチームでクリアしていく』)

入社8カ月で管理職になるためにやったこと全部話す。 - Everything you've ever Dreamed

 これらは環境の整備であり、準備段階。ボスからは新しい営業チームをつくって欲しいといわれており、数値目標を達成できる営業チームと仕組みを早急につくることを求められていた。『営業主体の商品開発』『無駄な営業活動の廃止』をスローガンに掲げた。この二つは、まったく別のものであるようで、密接に関係している。 

①4月/まあ、これも環境整備の追加になるのだが、会議や打合せを終了時刻事前申告制にした。結論が出なくてもヤメる。打ち切る。ダラダラした会議や打合せが見受けられ、あたかもそれをやることが仕事だと考えているようなフシが見受けられたからだ。調査のため、僕も会議や打合せに出席してみてテーマに関わりのないトークの多さに驚いた。数字で示さないと納得させられないので計測もした。すると1時間で平均15分弱程度はテーマと関係のない話をしていた。「営業の仕事とは?」「辞めた人間が今何しているか?」のような「仕事のようで仕事ではないそれでいて仕事をしているかのような気持ちよさ」を得られる無駄なトークが原因。

営業という仕事は、営業に関わる時間の量で結果が変わってくる。会議の時間を出来るだけ短縮させることが営業にかかわる時間につながると考え、打合せや会議をする際は原則「終了時間事前申告制」とした(最長45分間)。結論が出なくても強制終了させた。当初はうまくいかなかったけれども、実行していくにつれ、短くなった会議や打合せ中に結論を出すため、各自、入念な準備をするようになった。無駄な会議や打合せもなくなり、夏からは営業部だけでなく全ての部署で導入されている。

 ②7月/3名の優秀な営業マンの退職をプラスにとらえて営業支援ツールを刷新した。以前ここでも書いたが7月に3名の優秀なベテラン営業マン、通称「黒い三連星」が退職した。退職の理由は「僕のやり方に付いていけないから」だそうだが、ご本人たちより正確に記述するなら「付いていきたくない」からだろう。目標達成は厳しくなったけれども、僕は「新しいやり方を進めやすくなる」とポジティブにとらえた。個を否定してチーム制で取り組むような体制に移行していたので、彼らが考えているほど損害が出ないとも計算もしていた。

他の業界ではどう呼ぶのかしらないが、僕のいる業界では営業マンが同業他社にうつるときに「お土産」といって得意先や案件を持っていくことが多く、前の会社のときは辞めていく人間のお土産の多さで見通しを立てるのが困難なくらいだった。「俺の仕事」「自分の仕事」といういわば仕事を個でやってしまうことの弊害。僕はそういうのをなくすために(完全には無理だけど)チーム制を敷いたのだ。黒い三連星は予想通りお土産をもって同業他社への移籍をするようだったので、お土産候補の得意先やクライアントに出向いて、チームで担当しているので黒い三連星が退職しても今までと同様のサービスが可能であること、特典とサービスを付けることをアッピールするなどのお土産対策をした。「ふたたび彼が辞めるときにはまた彼に付いて行かれるのですか?継続的な長いビジネスをしましょうよ」という僕のセリフに効果があったか知らないがお土産対策、防衛戦は現時点で完全に勝利。黒い三連星には踏み台になっていただいて本当に申し訳ない。

 だが3名退職で穴が空いたのは事実である。欠員補充についてはボスからも対策を講じるよう求められたがあえて補充しないことにした。僕は人間を信用しない。そんな僕が7月にブラブラしてる人間が優秀な営業マンであるとはとても信じられるわけがない。それにいい人材かどうかは入れてみないとわからない。「採用、試用期間、うーんイマイチ」の繰り返しはウチのような規模の会社では致命傷になってしまう。

それなら現有戦力を底上げして戦い抜く作戦を採ることにした。底上げといっても現有の営業部員たちの能力が、突然向上するようなことはないので、彼らの事務作業の軽減と行動管理の徹底で効率的に稼働させるようにした。具体的には3人辞めて浮いた予算で営業支援ツールを導入した(営業日報は無駄なのですでに廃止済み)。営業部員各自が毎日どの時間にどのエリアにいてどれだけの顧客にどれだけの時間を割いているかを管理して、部全体での営業活動をサポートするツールで、少ない戦力を今まで以上に有効に活用できるようになった。とりわけ管理者である僕の仕事が楽になった。やったー。

 ③3月~5月中旬/僕は昨夏に自分を売り込んで今の会社に入った。そのとき僕が掲げたのは「営業主体の商品開発」である。完全にハッタリだったのだけど、入社したから僕のハッタリはあながち間違っていなかったと知ることになった。僕が入社したとき営業部はなかった。それぞれの事業部に営業部門がある組織だった。まあ、そういう組織体制が完全に悪いわけではないし、メリットもあるけれども僕にはデメリットの大きさが目についた。つまり売る側目線で「売りたいもの」「作りやすいサービス」を商品にしていた。これを僕は買う側目線から「買いたいもの」「欲しいもの」を商品にしなければ売上は伸びないと考えた。大きな原因のひとつに事業部付営業部門の問題があると考え、年始からボスにかけあって営業部を独立させた(その流れで、僕が部長になった)。

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営業マン=お客さんサイドの意見を商品・サービス開発に活かす、これまでの仕事の流れを逆にするためには営業部を独立させるしかないと思ったのだ。。(付箋イラスト参照 上段と下段で矢印が逆になっている。)

「え?何で?」「変えなきゃいけないの?」「クレームないよね?」抵抗は大きかった。そりゃそうだ。いきなり下にいた営業部門が対等の関係で要求をだしてくるのだから。それに「問題がないからオッケー」という捉えかたを変えるのはなかなか難しい。僕は新参者で会社に対する愛着はゼロなのでこれらの声を気にすることなく組織を変えることができた。「商品開発の流れを変えた!」というと大げさだが、今のところ営業部門からのリクエストで商品に反映させたのは、ロット単位を変えるとかパッケージ変更という些細なことだけだ。中身も生産工程も大幅に変えずに商品によっては数倍の売上を記録したものもあったので効果はあった。これからはお客目線のいろいろな商品やサービスが生まれてくるはずだ。売りやすいと営業が楽でいい。

 ④6月~7月/営業とは、かける時間が結果に直結すると信じて疑わないけれども、「営業は足で稼ぐ」は前時代的とも考えている。特にローラー営業は無駄な達成感だけしかない。営業は顧客に会ってナンボ。アポの数があって、商品・サービスの魅力があって、成約に至る。その母数はあくまでアポの数であり、アポに至らない外回りは無駄撃ちにすぎない。僕は20年営業という仕事をしていてそのうち15年くらいは足で稼ぐ、きっつー、な営業スタイルを強いられてきたのでこれ以上無駄なことはしたくない。無駄足人生もうイヤ。てっとり早くアポを取って、商品やサービスをどう提案に組み込むかという提案営業に時間と労力を注ぐような働きかたをしたいとずっと考えてきた。

そこで、この夏から営業を外注することにした。営業外注といってもアポ取り業務の外注である。もっと早い段階で外注したかったけれども、営業外注は万能ではなく、売れる商品とサービスがあってこその道具だと経験から知っていたので、営業主体の商品開発体制のメドが立つまでは控えていたのだ。アポの数が増えても、お客目線の商品がなければ、意味がないのだ。冒頭に掲げた『営業主体の商品開発』『無駄な営業活動の廃止』、一見、関係性のない二つの目標はここで繋がってくる。営業外注は上層部からの反発が強かった。「それじゃ営業がやることがなくなるだろ」的な。営業は足で稼ぐという前時代からの神話を僕は、外回り営業、ローラー営業の低い成約率を提示して、数字で破壊していった。そんな簡単な検証すらしていないことに驚いてしまったが。営業部の皆も、その能力を商品開発と提案営業に傾けてくれて楽しそうに働いているように見える。仕事が楽しいというのは楽をしたいだけの僕には理解できないけれども。

 まとめ的なものを書くと、9月末半期終えた時点で売上は対予算130%弱を達成している(利益は企業秘密なので言えない)。そのほとんどを暑かった7月からの3ヵ月間で稼いだ。仕事の体制が整ってからだ。つまり仕事とは仕組み次第なのだ。まあ、ボスのバックアップもあったし、前任者や会社組織が古いままだったり、うまくいったのはラッキーだったから。もし、僕が他の人より優れている点があるなら、「うまくいかなかったらヤメればいい」という軽いスタンスと、シビアなブラック環境を生き抜くために身に付けた猜疑心だろう。いいかえれば、人ではなくその人の仕事を信用するという姿勢だ。

目下の僕の仕事は部下の業務管理と新しい仕事アイデアを考案・採用し、トライしていくこと。これからもホワイトな会社をブラックな感性で良い方向に活性化させて、自分のようなブラック精神が染みついた人間を生まないようにしながら、早期リタイアまでテケトーに頑張っていきたい。(所要時間48分)