Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

元給食営業マンが「一食2673円」高すぎると話題の横浜市「ハマ弁」を考察してみた/2019年冬

こんな記事を見た。

www.kanaloco.jp

横浜市の市立中学校の希望者向け配達弁当「ハマ弁」1食当たりの公費負担額が2017年度で2673円だったそうである。2016年は1食あたり6313円だったので1食あたり3640円分、改善されたとみるべきなのだろうか。利用率は17年度末時点は1.3%で、年間の利用は17万7786食(16年度4万7825食)。市が負担した4億7515万9千円(16年度3億192万円)を総食数で割ると上の単価になるわけである。(参考 給食かわり「ハマ弁」1食に市費6千円 横浜、16年度:朝日新聞デジタル

導入時の前提、利用率20%で公費負担113円というのがおかしいという指摘もあるが、僕はあえて、その前提がそれほどおかしくない、というエクストリームな視点でこの文章を書いてみることにする。

元給食営業マンが話題の1食6000円の高すぎる学校弁当「ハマ弁」を考察してみた。 - Everything you've ever Dreamed

昨年、こんな記事を書いた。僕は記事で、見通しの甘さと、利用率の低さは利用者が支払う金額とハマ弁の内容がともなっていないこと、高コスト体質は複数の業者がからむ運営体制に問題があると指摘した。その認識は今も変わっていない。


ただ、この記事を書いたときは、利用率があがれば、一食あたりの公費負担が軽くなるはずと楽観的に考えていたが、事態は僕が考えていたよりも深刻であるようだ。なぜなら僕の楽観には、ハマ弁事業にかかるコストがある程度抑えられているうえで、利用者が増えていくという前提があったからだ。ところが利用者は18年度で10%を目指しながら18年12月でたった2.6%。昨年4月、値下げに踏み切っているにもかかわらず、たった1.3%しか上がっていないのだ。きっつー。現在、生徒は340円で食べられるらしいが、これ以上の値下げは公費の負担が大きくなるので現実的ではないだろう(効果ないし…)。

コストについても、16年度から17年度で1億7千万円ほど増えている。利用率のアップ(昨年12月の時点で1.3%アップにすぎない)に対して、コストが約50%アップしているのは、明らかにおかしい。セントラルキッチンで生産を集約しているのに、なぜこんな高コスト体質なのだろうか。これは事業年度ごとに事業費を負担する契約(年間委託)が元凶といわざるをえない。乱暴な言い方をすれば、食数がどうあれ、この年度はこの金額でいきます、という契約。もちろん、受託サイドからみれば、設備と人員と利益とを確保しなければならないので、こうした契約形態でなければ、契約する業者は皆無だろう(18年度の利用率目標は10%。最終目標は利用率20%!!)。安全で美味しい食事にはお金がかかるのは僕も業界にいるのでよくわかる。だがこのペースでコストが上昇していたら(セントラルキッチンでそんなアホなことはないはずだが)、当初の構想通りに運営がなされるのか、という疑問は残る。

仮に、18年度の利用率目標を達成していたら1食あたりのコストはどうなるだろうか。17年度の実績ベースで利用率10%の食数を算出すると1,111,162食。17年度の運営コスト4億7515万9千円をこの食数で割ると、1食当たり427円となる。仮に運営コストが横這いのまま利用率が20%になれば1食当たり210円程度になる計算だ(実際には生徒数が変わるのでかなり雑だけど)。運営コストの削減さえ出来れば、当初の構想である公費負担1食あたり113円も、机上では実現できそうな目標に見えるのだ。

結論をいうならば、17年度のハマ弁事業の悲惨な現状は利用率の停滞が話題になっているが、実は、運営コストの増大が想定を越えていることが大きいのだ。そして運営コストの問題は、繰り返しになるが、年間で事業費を業者と契約するという形態が元凶だろう。弁当事業なのに契約形態は従来の給食事業と同様の契約になっているのだ。解決策としては、事業全体で運営コストを見るのではなく、1食当たりの運営コストを決めてしまえばいい。もちろん1食あたりの単価で契約するのは、現状の低利用率では現実的ではない(業者が逃げる)。だが、あえて厳しい言い方をすれば現状の契約は業者に甘すぎる(ゼロ食でも赤字にはならない)契約なのだ。普通に考えてみればわかる。あなたの職場の社員食堂がなんらかのトラブルで食事提供が出来なくなり、スポットで仕出し弁当業者に弁当を依頼するとき、弁当の販売価格×個数のマネーしか支払わないはずだ。それと同じことが出来ないのかという話なのだ。たとえば、全国展開しているシニア向け弁当事業は、1食あたりの単価設定をしているが、あそこから学べることはあるのではないかと思う。

いずれにせよ、運営コストは削減しなければ、公費負担は減らない。だが現実はイバラの道だろう。昨年の夏、こんなことがあったのを覚えているだろうか。

横浜市 ハマ弁の弁当容器等製造費用に係る精算誤りについて (平成30年09月21日記者発表資料概要)
簡単にいえば、運営会社JMCは弁当容器の製造を2万8千個と市に報告していたが、実際の製造数は4400個あまり。市は精算してしまったので、経費を過払いしていたことになる。それでもJMC解約の話は伝わってこないのがワンダーではある。まあ、あれこれ考えてみたけれど、こんな杜撰な運営をしていたらハマ弁事業の正常化、公費負担削減なんて夢のまた夢。横浜市民の皆さまはもっと怒ったほうがよろしいのでは?(所要時間28分)