Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

新人が居眠りするのは個性らしいよ。

昨日の帰り際、「相談に乗ってほしい」と同僚(管理系部署の長)から酒に誘われた。相談は爆弾である。ロクなことがない。だが断れなかった。今後、仕事上で頼みごとをする際に「えっ、相談に乗ってくれなかったのに、要求はするの?」と嫌味を言われてやんわりと断られる、そんな事態を招くのは避けたかったのだ。

いつもの居酒屋で中ジョッキを飲みながら話を聞くと、実にどうでもいい話であった。今月から同僚の下に配属された新人さんの勤務中居眠りにどう対処すればいいかわからない、というのだ。「ガツンとやればいいだけっすよ」と僕が言うと、そういうの時代遅れだよね…と前置きして「彼にもいいところはあると思うんだよ」などと彼は言うのだ。「いやいや1ミクロンもいいところがない人間の方が宝くじ1等前後賞当選レベルでしょ」「そういう屁理屈はやめてくれよ」中ジョッキ追加!

新人くんが勤務中にトイレの個室にこもって居眠りをしているのは話題になっていた。自分の部署ではないので、オフィスで居眠りされるよりはマシ、排便に力尽きているだけかも、ウンコするときは出てきてくれるといいなー、と軽く考えていた。やんわりと注意すればいい話だと。ところが僕の予想に反して当該部署は新人クンの居眠り問題についてミーティングをはじめた。本人の気持ちに配慮して、本人が不在のタイミングで話し合いをしていることに驚いてしまった。それから話し合いのなかで、「居眠りの新人クンの個性」「個室がひとつしかないトイレも問題」というフレーズが聞こえてきて驚愕してしまった。きっつー。個性の問題が個室の問題になってるし。僕は、率直な感想を述べた。「あのー緊張感なさすぎではないですか?」すると同僚は「いやいやいや、緊張感があるからこその緊急ミーティング。深刻な問題だと受け止めているんだよ」と言う。出ました。「なんでも深刻に受け止めればいい現象」。それは、くだらないことを深刻化させ、ワケわからなくして余計な仕事を無限増殖させていく会社組織でときおりみられる現象である。それから同僚は、「コンプライアンスが…」、「ハラスメントにならないように…」、「彼の個性を殺さないように…」という戯言を繰り返すばかり。僕はスマホでプロ野球速報(広島対ヤクルト)をチェックしながら、「絶好機を逃しましたね」「若手を使うのは難しい!」「このピンチをどうしのぐか…」と試合展開にあわせた独り言をつぶやいていたのだけど、奇跡的に同僚の言葉への相槌になっていたらしく、そうなんだよ、わかってくれるか、という彼の声がスワローズの得点の彼方に聞こえた。中ジョッキ追加!

やはり緊張感がないように思えた。真剣みっていうのかな。コンプライアンス遵守、ハラスメント回避、個性尊重。それらしい言葉を持ち出して問題の本質から逃げているだけである。それは新人クンのためという建前だが、実のところは自分たちの保身にすぎない。これをいったら問題になる。あれをいったら角が立つ。そういうメンドーを回避しているだけなのだ。本当に新人クンを育てたい、個性を伸ばしたいと思っているなら、真正面から、恐れず、ガツンとやるしかない。もしかしたらそれで彼が抱えている深刻な問題(病気とか家庭環境とか)がわかるかもしれない。だいたい、緊張感のなさが新人クンの睡魔を召喚しているんじゃないのか。ヤルかヤラれるかレベルでなくていいが、ある程度の緊張感は必要だろう。つまり、新人クンの居眠り問題に取り組んでいるのではなく、「この問題に我々は真剣に取り組んでいますよー」と第三者に見せているだけなのだ。というようなことを僭越ながら申し上げて、「ポーズやめましょうよ」と付け加えると「厳しく当たって辞めちゃったらどうするんだよ」と彼は言った。アホか。そこまで厳しくしろとは言っとらん。中ジョッキ追加!

今朝、出勤する際たまたま新人クンと同じエレベータになったので「寝るなら昼休みにしろよ」と先輩風を吹かせておいた。そしたら例の同僚が「勝手にウチの部下に助言しないもらいたい」とえらい勢いで飛び込んできて、組織ガー、命令系統ガー、と騒いでいった。またポーズですか。みなさま個性を尊重するばかりで、反省がなく、大変よろしい。(所要時間20分)