Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

『空母いぶき』炎上でツラい記憶が蘇った。

「空母いぶき」という新作映画に首相役で出演している俳優さんが、現職総理を貶めるようにキャラクターを変更したと発言して大炎上していた。おこづかいが少なすぎて、すでにコナン君とピカチュウ君の探偵映画2本を鑑賞してしまった僕に、当該映画を観に行ける余裕がなく、どのように貶めているのか、自分の目で確認できないのが残念でならない。そういう事情があるので、あまり人の病気を揶揄するのは感心しないなあ、という薄い感想を持つだけである。薄口すぎて、激烈な反感を覚えた人には申し訳ないくらいだ。

それでも、反感を持ったり、強い怒りを持つ人の気持ちはよくわかる。原作の設定にどれほど意味があるのかわからないが、愛着を持っている人からしてみれば、首相というキャラクターを腹くだしキャラクターへと変えられるのは、「改悪された!絶対に許せない!」となるだろう。正義感の強い人からみれば、たとえ現職総理のやることなすことアベノミクスや消費税増税が気に入らなくても、「病気(潰瘍性大腸炎)で苦しんでいる人を揶揄するのは間違っている!絶対に許せない!」ということになるだろう。

僕は現職総理の苦労が少しわかる気がする。彼が患っていた病気とは少々違うが、僕も胃腸では人並み以上に苦労したからだ。子供の頃、僕はよく腹を下していた。毎朝「飲まないと大きくなれないよ!」と親に言われて飲まされていた牛乳が体質的に合わなかったのだ。腹がピーゴロゴロになってもトイレへ駈け込めばいい。だが、草野球で守備についているとき、あるいは攻撃時にランナーで塁に出ているときにピーゴロゴロになってしまうと大ピンチになる。フォアボールで一塁に出塁したときにピーゴロゴロに襲われたことがある。ピーゴロゴロのゲリピーなのでリードが出来ない。味方からは「なんでリーしねえんだよ!」敵からは「ランナーびびってる!」野次られる。問われるケツ筋力。流れる脂汗。そこへ人の苦労も知らずに、味方がピッチャーゴロを打つものだから、二塁へ走りだした瞬間に、僕はピーゴロゴロを漏らしてしまった。それからしばらくの間、当時中日ドラゴンズに在籍していた助っ人の応援歌でバカにされる日々がつづいた。ゲーリー!ゲーリー!ホームランー!あの屈辱の時間が僕の人格を歪めたのは間違いない。この経験がなかったら、「空母いぶき」で総理役を演じた俳優さんの発言に対して何の感想を持たなかっただろう。人間は、自分で経験したことだけしか、正確に想像できない生き物だからね。人の苦労がわかるというのは、わかったつもりなだけなのである。

「空母いぶき」の炎上現象で、個人的に興味深いのは、ツイッターで「うわ!こんな非常識な発言をする俳優が出演する映画は観たくありません!」「原作に興味があったので観るつもりでいましたが、観ないこと決定!」と映画を鑑賞しないとわざわざ表明する人である。僕が知るかぎり、彼らのツイートを辿っていっても「空母いぶき」鑑賞表明をしている人はいなかった。鑑賞を表明していないのに「観るつもりだったけれど私は観ません!」と意思表明されても、本当に見るつもりがあったのかわからないし、抗議の意味で鑑賞しない意思を表明されても、もともと観るつもりのなかった人が鑑賞しなくなるだけなのであまり興行成績には関係がないのではないかな、と意地悪に思った次第である。ちなみに僕はこの炎上騒ぎがなければ映画の存在に気付かなかった派。まあ、件の俳優さんの発言は受け止め方によっては、それなりの批判を受けても仕方ないよなーとは思う。それだけ。(所要時間16分)