Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

中間管理職の悲哀

労働集約型事業からの転換には「どんな犠牲もいとわない」という、トップの強い意志が必要であると、確信させてくれる事件があった。本日はその事件の顛末を発表する。是非とも皆さんの参考にしていただきたい。

弊社(食品系)は労働集約型事業からの転換をはかっているが残念ながら計画どおりに進んでいない。遅れの理由は労働集約型事業にどっぷりはまっている体質が大きな理由である。労働集約型事業が中核事業となっているが、その甘みを忘れられないのだ。だが、生産性の低さ、人材確保の困難、募集費の費用対効果の惨状から、そこからの脱却が待ったなしの懸念事項になっている。

先日の部長会議でもボスから各部長へ「労働集約型事業中心のままでは未来はない」と課題解決への一層の努力が求められた。新規開発を担当している僕には、「キミを招いた理由わかるよね…」と強い圧力がかけられた。それからボスは「言うまでもないが既存の事業も大事にしなければならない」といって「既存の仕組みを守りつつ新しい仕組みを構築するのは、一度ぶっ壊して新しくするより困難な道である。あえて我々は困難な道を歩んで成功しようじゃないか」と付け加えた。周りの部長連中は社長の言葉に表面上感銘を受けたようなポーズを取り、やりましょう!社長!と声をあげていた。僕は、頑張りましょう!と声を出しながら、楽な道を進めばいいのに…と内心では思っておりました。

営業ミーティングで部長会の決定事項を伝達した。「労働集約型事業への転換が急務であり、その役割の大半は我々営業部にかかっている。新規事業開発が最優先。一方、我々が食べていられるのは既存事業のおかげでもある。だから皆が抱えている案件は、それが既存の事業の延長でも、そのまま進めてほしい。以上」まとめるとこんな感じである。

我が営業部では活動報告書は完全に廃止して10~15分の個別ミーティングで案件の進捗を確認している。時間の節約と成約率の向上とうカタチで結果にあらわれている。そのなかでとある案件について部下Aにたずねた。有力な大型案件だが、7月以来、進捗がなかったからだ。報告は驚くべきものであった。「ウチの会社の方針を説明してこちらからお断りを入れました」今、なんと?「労働集約事業からの脱却を図っているから、貴社との商談は進められないと説明しました」「既存の案件はそのまま進めるという方針だったよね」「最優先は労働集約型事業からの脱却と部長は仰りましたよ」

確かに言った。言ったけどさ、既存の顧客をぶった切れとは言っていない。「細かいようだけど脱却じゃなくて転換。ま、それはいいとして、商談はそのまま進めてと言ったよね」「『そのまま』って労働集約事業からの脱却方針に沿って、という意味かと思いました。あの話の流れではそう取られても仕方ありませんよ」注意するつもりが注意されてしまった。たしかに無理に解釈すればそう取れなくもない。きっつー。

速攻でボスに報告をした。なぜ、速攻なのか。大型案件問題であり、この失態が自分のミスではないことを証明するため。我が身かわいさからである。ボスは予想外にも「それは部下じゃなくてキミが悪いよ。守れるような、きちんとした指示をしなきゃ」といったのである。僕の指示はシンプルだったはず。労働集約型事業から転換しよう!でも今のお客さんとの商談は安心して進めてね!間違えようがない。滅茶苦茶な解釈をされただけではないか。わからない。

「私はどうすればよかったのですか?」と僕が訴えると、ボスは、がっかりさせないでくださいよ、と前置きして「進めると指示するときはきちんと指示しないと。最近の若者には通じません。今回の場合はキミは進めてと指示を出したといいましたね」「意味がわからないのですが」「進めて、ではなく、前に進めて、と言わなければダメですよ」「…」「で、最後に念を入れて、指示を守るように指示をする。進める方向を指示しなかったキミのミスだ」「わかりました」と言いながら納得がいかなかった。ボスはそう言わざるをえないと頭では理解していても感情が、進めるのは前に決まってるだろ、ざけんなよ、と叫んでしまっていた。

僕の内心を見透かしていたのだろうか、ボスは最後に「私は会社のあり方を変えるためには、どんな犠牲を払っても仕方ないと思っている。部下A君はプロパーで君は中途入社。厳しいようだが、営業部長のキミを犠牲にすることだっていとわない」と僕に告げた。僕はボスの強く冷たい決意をその言葉のなかに見い出した。このように労働集約型事業からの転換のような、会社のあり方を変革するには、中間管理職(中途採用)の血の犠牲が必要なのだ。僕はいつものように納得できないことを納得しながら進んでいく。後ろに、ではなく、前へ。心を殺して。(所要時間24分)

こういう逆境を乗り越えるための、会社員による会社員のための会社員の生き方本を書きました→ぼくは会社員という生き方に絶望はしていない。ただ、今の職場にずっと……と考えると胃に穴があきそうになる。