Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

取引先の新人女性から「彼女いますか?」と聞かれました。

100億年ぶりに女性から「カノジョさん、いないの?」と言われたとき、どこか懐かしく甘い匂いがした。何の匂いだろう?僕は言葉を探しながら考える。そして捜し当てる。再生、確認。間違いない。真夏の海岸で嗅いだコパトーンの甘い匂いだった。「彼女はいませんよ」僕は言った。妻の目を盗み、真実と嘘のボーダーをかすめるようにして。年の離れた相手に。

声と匂いの主はクリニックを運営している法人で事務職として働く女性で、今年の春から働いている新人さんだ。僕がクライアントである理事長先生と面談する際はいつも、彼女が応接室に通してくれた。麦茶から番茶へ。季節の移り変わりと共に彼女のいれてくれるお茶と交わす言葉も変わった。「今日は暑いですね」「夕立になりそう」「あっという間に秋が来てしまいましたね」彼女はいつもとびきりの笑顔で僕みたいな中年男に話しかけてくれた。そして今日の「カノジョさん、いないの?」カノジョという響きが新鮮だった。「ご結婚は?」「お子さんは何人?」年齢相応のクエスチョンで乾ききった僕の心にカノジョの響きは染み渡った。僕が置き去りにしてきた言葉たち。腐敗して朽ち果てず、死蝋化した響きたち。カノジョはそのメンバーだった。47才、恋を忘れていたモノクロの時間に色彩が回復した。こんな甘酸っぱい時間はラブプラス以来かもしれない。姉ヶ崎寧々が頭に浮かんだ。寧々姉さんとの止まっていた時間が動き出すかもしれない。

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「おいおい熱くなるなよオッサン」常識が肩を叩いて待ったをかける。ムリだろ。とても。確かに。事務ガールと僕は親子ほどの年齢差があった。アバウト25イヤーズ。生きてきた時代や考え方もまったく異なるだろう。越えなければいけないハードルを考えると頭をかかえてしまいそうになる。その一方で25年を飛び越えてしまえば、経験したことのない甘美を味わえる。期待があった。背筋ゾクゾクするような背徳に支えられたコパトーンの甘美が待っている。そんな予感がした。常識が僕の肩を叩く。そして言う。「冷静になれよ。どう考えてもムリだろ?破滅する気か?」うん。確かにムリだ。事務ガールの胸にあるバッジに刻まれた「シルバー人材センター」という文字列が僕に現実を戻した。どう考えてもムリだろ。絶対。気がつくとコパトーンの匂いは実家の母ちゃんの匂いに変わっていた。(所要時間10分)

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