Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

ミス・インディペンデント(とあるガールの孤独な独立)


 ごめんごめん待った?向かい風が強くてさ…。あれマヤちゃん髪切った?え。風でボサボサになってるだけ…そーなんだ…。薫似君の部屋はこのアパートの…二階なの…じゃ、行こうか(テテテ)。402…402と。あった402号室。(ガジョガジョ)あー鍵かかってるなあ。ごめんマヤちゃん管理人さんに事情を話して鍵借りてきて。うん無断欠勤行方不明そういう不穏な四文字熟語並べて適当にエコとか言えば老人は鍵を貸してくれるよ。じゃ頼んだよ。(タッタカタッタカ)


 うわー、マヤちゃん思いきり嫌な顔してたなあ。テレてるなあ。しっかしまさか薫煮君が心の病になって会社に来なくなるとはなあ…心を病んでいるとは全然気が付かなかったなあ…。焼き鳥屋でサシ飲みしたのは四月だったっけ…そうだ、あのとき女学生と付き合っていて幸せとか言っていたなあ。制服姿でいろんなことをしているって言ってたなあ。JKか…、もしかしたらJCだったかも…通報しときゃよかった…。


 あれからだな、薫煮君がやたら白い歯を見せてムカつく表情をみせるようになったのは…。僕は仕方なく泣く泣く消しゴムのカスを投げつけたりアダルトDVDをTSUTAYAに返しに行かせたりして厳しく指導したんだった。忘れてた。まさかなーこんなことになるとはね…どうしたんだろ薫煮君…。あ、でももっと厳しくやっておくべきだったなぁ。だからこんな台風の日に会社のノートPCを回収しなきゃいけなくなったんだからなぁ。


 (ダッタダダ)。マヤちゃんだ、管理人さんですねどーもすみませんすぐ終わらせますから。(ガリ)。さ、扉が開いたよ。マヤちゃんどうぞ。え?暗くて怖い?マヤちゃん。君はもう立派に独立した大人の女性なんだよ。Aカップでも大人なんだ。この仕事は君の仕事で僕は助っ人に過ぎない。そ。大人って一人でやらなきゃいけない孤独な生き物なんだよ。じゃ行ってみようか。僕はドアの外で待ってるからね…。


 (テコキテコキ…ギャー)ど、どーしたの?急に飛び出してきて。顔、真っ青だよ…。え…。幽霊…。へ、へ、椅子に座ってるの…。たぶん薫煮君の彼女だよ…。うわー。押すな押すな。こら管理人さんまで〜だから押すなって、クソじじい、髪抜くぞコラぁ。わかった行くよ行きますよ行きゃいいんでしょ。暗!薫煮ちゃ〜んお邪魔しますよ〜。生臭いなあ。汚いなあ。あ、パソコン発見〜。マヤちゃんパソコンあったどー。よいしょっと。


 あれ?誰かいる。椅子に座ってる。薫煮の同僚でーす。もしもーし。もしもーし。あれ。ああ、なるほど。彼女、死んでる。マヤちゅん警察呼んでー。じゃ、じゃあ用も済んだから帰ります…お邪魔しました…(ガチャ)。薫煮君…彼女は独りで待っているよ…透け透けのセーラー服を着て君を…誰も彼女は触れられない…君だけを…孤独を抱えて…彼女の唇に実る樹脂製の桃は…君だけの永遠永遠。