Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

ツンデレ精算


 総務のマヤちゃんは、社会に出てから時間が経っていないせいか、年長の人間に対する言葉遣いが時々おかしい。おかしいというか、ぎこちない。今日もなんだかおかしかった。そのことを、いつか誰かが指摘しなければいけない時がやってくる、いつか誰かが嫌われ役を引き受ける時がやってくる、それは僕になるかもしれない、もし、その役が僕になったなら、マヤちゃんの未来のために嫌われ役を存分に演じてやろう、きちんとした言葉遣いは必要なものだから。そんなふうにいつも思っていた。


 僕の会社では、営業部門の人間は原則2週間に一度、交通費や活動費の精算をすることになっている。部長の印をもらった所定の書類を、総務に提出し、その場で現金を受け取る、というやり方だ。午前中に、ルールに従って総務に行くと、マヤちゃんの姿がなかった。少し待っていたけれど、なかなか戻ってこない。アポの時間が迫っていたので、後でまた来ようと、書類だけをデスクに置いて、僕はその場を去った。


 数時間後、定刻間際に会社に戻ってきた僕のところに、マヤちゃんがやってきて僕に茶封筒をズイっと突き出した。「なにこの封筒?」「お金ですっ!」「えー今日はどうしたの?」「別に!特別じゃないし!し、仕事なんだからねっ!早く家に帰りたいだけなんだから!」こういう可愛らしい言葉遣いなら、多少おかしくてもいいと思った。敬語とか糞食らえだ。僕は若者に対して理解のある大人、なのだ。ツンデレ万歳。