Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

リスク回避


 会社に使われて終わってしまうような一日を送るのはやめよう、と思っている。僕のほうが、会社を利用している、そんな心持で最近は会社に通っている。だから会社や仕事のために、必要最低限以上の無理をしよう、とは思わない。リスクを負うなど、なおさら。


 僕にとって、できるだけリスクを回避するのが、今の課題だ。現代社会はリスクが多すぎて、何かの拍子で、臭い飯を食べる事態に陥りかねない。例えば、今朝の満員電車、傍に女性がいるとき。リスクの発生だ。こういうとき僕は、敵に包囲され、あえなく降伏して、塹壕から両手を上げながら恐る恐る這い出てくる一兵卒の如く、両の手を吊革にかけて、降伏のサインを周囲に見せ付ける。「僕は絶対に触れません。頭上にある僕の手を見てください」というサインを。そうやって何も考えずに、吊革を掴む両手に全体重をかけていると、レールのつなぎ目に車輪が達するときに発するガタンゴトンて音と揺れに、ゆらゆらりと身体全体が揺れる。海流に身をまかせてる海草のように。


 女学生のグループが騒々しく乗り込んできて、僕の背後に陣を張った。海草の物まねで完璧に対処しているので、何も、恐れることはない。ただ、周囲に点在するエロ記事を読んでいるオヤジたちと同じような物体として、背後から見られているのではないかと気が気でなかった。僕は、彼らとは違う。同じカテゴリーにぶち込むな!海草なんだ!違うんだ!と心の中で叫び続けた。


 そうしているうちに、僕の斜め前でフケをまいていたオヤジが降りて、代わりに、ひときわ胸の大きな学生風の女性が座った。電車の奏でるガタンゴトンという音と振動で、その胸が震えた。海草に成り下がったはずの、僕のハートも震えた。オッパイは、海草すら虜にする。背後にオッパイの群れ、前方に大きなオッパイ。これぞ、武田軍の啄木鳥戦法。車懸りの陣をもって、すべてのオッパイを撃退し、記憶に刻みこみたかったけれど、ぐっと我慢して目をつむり、時の過ぎ行くのを待った。