Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

宴のあとに夜桜

 土曜日。新宿。宴席で馬鹿のようにオッパイ、オッパイと叫んでいるうちに終電を逃していた。一人になった僕は、夜の新宿を彷徨った。当てもなくぶらりぶらりと。いつの間にか、花園神社の隅っこに腰をかけ境内を眺めていた。深夜一時。人の気配は疎らで、時折、水商売風の女性が二・三人連れ立って甲高い声を上げながら通りすぎるだけ。何がそんなに楽しいというのか?わけもなく癪に障った。我侭な八つ当たりだ。酒が回り頭を起こしていられなくなって横になると、夜桜の幕。桜はこの春最後の賑やかさを見せていた。知らないうちにコンタクトレンズを落としていた。そのせいで、夜桜は滲んで、霞んで、夜空に融けていくように見えた。花の賑やかさとは対照的に周囲は静けさに包まれていた。静寂は僕から思い出したくない記憶を掘り起こした。余計なことを。なんなんだよ。


 酉の市。露店の連なり。飴細工のおじさん。焼けたソースの匂い。縁起熊手を買った人に便乗した手締め。パン!パン!初詣。晴れ着の山々。占いを結びつける人影。賽銭箱に響くカランコロン!あのとき見たお祭りの華やぎは、本当に現実だったのだろうか。夢。夢のようにしか思えなかった。いっそ夢ならば。僕には、頬に触れている境内を走る路地の冷たさだけが現実だった。風が吹いて花が散った。花びらは酒臭い僕を避けるように地面に舞い降りた。僕はそのまま、一緒にここを訪れた人のことを思い出しながら眠った。愛し君 乳首はきっと 桜色