Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

超重列車砲あらわる

 今朝、おかしなものを見た。はじめは幻覚だと思った。就寝前に服用した薬の副作用で視覚神経が麻痺しているのだと思った。そして、熱さを伴った目覚めだった。僕の前に現れたもの。異形。怒涛。空前絶後。超弩級。形容する言葉が見当たらなかった。次に僕は、目覚めない頭のなかを引っ掻き回して、類似物を見つけ出そうとした。複雑かつ秩序を保ち天空へと伸びる様はガウディのサグラダ・ファミリアに似ていなくもないが、地上にあるあらゆるものを破壊しつくしてしまいそうな底知れぬ力を内包したフォルムはむしろ先の大戦で使われた独軍の列車砲グスタフとドーラに近い。グスタフとドーラ。総重量1300トン。全長40メートル超。おそらく史上最大の陸上兵器。今後もこれ以上の規模の陸上兵器は登場しないであろう。滅び行く種族、恐竜の運命を想わせる。


 予兆は真夜中にあった。夢と現実の境界。身体のまわりを薄い膜がうっすらと覆う曖昧な時間。寝返りを打ったときに奇妙な感覚を覚えた。ちょうど空気の抜けた自転車で走っていて、空気をいれるバルブのところが接地するタイミングでゴトンとくるあの感触。あの感触が寝返りの途中に、あった。ぼんやりとした違和感があった。久しぶりにあった旧友がパッチリとした二重瞼に進化していたときに覚えた、懐かしさと温かみを含んだ違和感だった。僕の前に現れたもの。確認をするために僕は枕元に置いてある眼鏡をかけた。薄々感ずいていたが肉眼でしかりと確認したい。男の性である。陰茎、ハルキムラカミいうところの「ペニス」が猛々しく膨らんでいるのを確認した。僕はまだ生きている。射撃可能なんだ。ナウシカのようにノーパンで歓喜の舞いを踊った。


 グスタフ、ドーラ列車砲に話を戻そう。夢の超兵器とも思われた両砲だが、その巨大さ故に兵器としての運用は困難を極め、実戦で使用されたのはセバストーポリ要塞攻略戦他数回にとどまったと言われている。僕のペニス列車砲も同じ運命を辿るのだろうか。ちなみに「ドーラ」という名は列車砲設計主任ミューラーの妻の名前から採られている。国家的巨大プロジェクトの重圧で不能になったミューラーが妻を慰めるため、勃起したペニスに似た巨大砲にその名前を付けたといわれている。嘘である。