Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

覆面レスラーからの電話


 正午過ぎ。うんうん唸り、すれ違うギャルを胸を中心にねっとり眺め、よたよたーっと小田原市街を歩いていたら、覆面レスラーをやっている友人から電話がかかってきた。初恋ガールの入籍と親友の葬式が一緒にやってきたってここまで落ちないだろーっ、ていうくらいに僕が落ち込んでいるのを、マスクの下から察したらしい。さすがスカイハイ。チャーパカパカパ♪昼のリングと、夜のマットで、鋭く鍛えられた眼力たるや加藤鷹クラス。ブラボー。潮吹いちゃうじょじょー。僕は、とても順調からは程遠い状態なのだけれど、彼も、やれ試合がなかったり、ファイトマネーが払われなかったりとぱっとしないらしい。最近は魔法使いのお伽噺をして過ごしているという。で、その覆面レスラー友人が凹んでいる僕に何を語りかけるのだろうなんて、シャープ製携帯を握る手に汗をかき、ぎりぎり身構えていたら、「最近、『聖闘士星矢』にはまっててさー。三巻まで買ってきた」などと突拍子もないことを言い始める。「はあ…」「暗黒聖闘士とか知ってる?」「なにそれ。ハーデス篇のあと?」「全然序盤だよー青銅聖闘士と同じ姿しててさー」云々「げらげら」「げらげら」。聖闘士星矢の魅力を熱く語ったあとも僕らの小宇宙はぐつぐつと燃焼していて、セブンセンシズ、エイトセンシズを超えて、シックスナインセンシズへと延焼していった。つまり下ネタ。セックス。「ちんこ」「まんこ」、「風俗にドルジ」「ドルジいるいる」、「僕インポテンツなんなのさ」「えーあれネタじゃないの?」「ガチ」ガチガチにならんけど。「薬とかどう」「バイアグラを飲んだらですね。僕のチンコが寄生獣のミギー状態になってですね、暴れるわけですよ。怒った王蟲みたいに。真っ赤な目をして」目ないけど。「それで?」「当然ナウシカもいないから翌朝になっても鎮まらなくって…、チンコがスーツのなかに入らなかったので仕方なく午前中だけ会社を休みました」「えー!」、「オッパイ好きってネタじゃないの?」「ネタじゃないよ。オッパイ以外にはあまりていうか全然興味ない」云々「げらげら」「げらげら」。なーんて調子で、真昼間から30代のいいトシしたオッサン同士で仕事もしないで馬鹿な話を繰り広げていたわけだけど、僕は随分と気が楽になった。こういうのは大事っていうか、まあ、そういう感じ。覆面レスラーは僕よりもオッサンを長くやっているだけに懐が深いっていうか、まあ、そういう感じ。イエス!オッパイ!