Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

出会い系の夜


 異性との出会いがないと絶望していた。顔と性格はいい。定職もある。趣味はテレビゲーム。だからチャンスさえあればなあ。お魚くわえた野良猫を追っかける日曜の夕べにはもう飽き飽きだ。でも、まあ、僕はちょっとちがうぜ。はは。絶望つってすぐに気持ちが折れたり、関係のない第三者に八つ当たりする輩とはちがうぜ。ははは。時はまさに21世紀。インターネット検索的サイトで「出会い」と入力してクリック。ほらね。出会いをキーワードにしたホームページが星の数ほども。


 出会い系サイトというと、近年、犯罪の温床となっている背景があったりして、いやーな感じを抱くレディース&ジェントルメンも多いと思うが、絶望に瀕している弱者を狙って悪事をはたらこうとした悪人が、獲物であるところの僕のように絶望した人たちが集まる出会い系サイトに漂着しているだけであって、登録している方々のほとんどは僕と同様に純粋に出会いを求めるレディース&ジェントルメンばかりじゃないかなあ、ってポジティブ教徒に今日から鞍替えし、幻惑的な言葉が並ぶサイトをぽちぽちと眺める。楽しいなあ愉快だなあ。ホルストの『火星』を、レレレ・レン・レン・レレ・レン、口ずさみつつ。


 ほとんど、有料。定職はあるがお金はね、ちょっとね。なんて出会い系を仕分けしているとあった。メールアドレス非公開で安心安全。会員登録した方全員に無料ポイント300ポイント贈呈。すっげー。ほくそ笑みながら、年齢身長体重性癖などのプロフィールとメールアドレスをフォームに入力、ちょっとサバよんで36歳のところを26歳にしとこ、なんて登録。さ、リストから住所が近くバストFカップで彼氏いなくて寂しい胸、もとい、旨をプロフィールに記した里緒さん(21歳アパレル関係)を選んで、ほう、アドレス非公開でもメッセージをやりとりできる優れものシステムなのねと感心しながら、どうも〜ってフランクでヤングな文章を書きはじめた。楽しいなあ充実だなあ。レレレ・レン・レン・レレ・レン、口ずさみつつ。


「里緒、我が命の光、我が腰の炎。我が罪、我が魂。僕は鎌倉住みのぶっちゃけチョーヤバイ感じのサーファーです…ボードもアソコもロングで云々…」さて、オリジナルで情熱的な文章が書けたからメッセージを送ろうとすると《メッセージ送信には200ポイントが必要です》なんて書かれていて、ま、300ポイントあるからねって送信。残り100ポイント。果報は「竜馬伝」をみながら待て、待てども待てどもメッセージが返ってこない。いやきてた。でも読めない。《女性からのメッセージを読むには200ポイントが必要です》だと。はい、ここで問題。『36才のフミオさんは二年間のED生活を経て出会い系に登録し無料で300ポイントを貰いました。メッセージを一通送るのに200ポイントかかるので躊躇しましたが5分もかけて書いた手紙がもったいないのでポイントを払ってメッセージを送りました。女性からメッセージが返ってきました。メッセージを読むには200ポイントが必要です。さてフミオさんは何ポイント買えばいいのでしょうか』 答え/100ポイント。楽しむにはお金がかかるなあ。レレレ・レン・レン・レレ・レン、口ずさみつつ。


 100ポイント。1ポイント=1円。それくらいならとポイントを買おうとするとポイントの購入は1000ポイント単位だって、くそう。お金が惜しいんじゃなくて、その汚いやり口が許せない。誰だよ出会い系はレディース&ジェントルメンばかりだなんて言ったのは。僕だ。NHKスペシャル無縁社会〜“無縁死”3万2千人の衝撃〜」を観ながらどよんと暗い気持ちになっている僕の目の前でメールアドレス非公開で安心安全なはずのパソコンにメールが轟々と届いている。その大半が気さくな外人からの『ハーイ!EDで悩んでいるブラザーのために今日はVIAGRAを特別に80パーセントオフで売ってやるよHAHAHA』という内容の英文メールなのはどういう皮肉よ?ルールールルールールールルー。歌は『火星』から『夜明けのスキャット』にかわっていた。