Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

勝手に死にやがれ


 大学時代の知り合いが死んだ。自ら命を…らしい。冷たい言い方になるが、死にたい奴は死んでしまえばいいと俺は思う。皆、お前に同情しているように見えるかもしれないが、いい大人の俺たちはポーズをとってお互いの顔色とスタンスを伺うことだけはうまくなっていて、今だってお騒がせで馬鹿なお前とどう対峙すれば楽か考えているだけだ。皆明日になったらお前のことなんて忘れて保育園に子供預けて仕事して普通に生活するよ。だからお前も俺らのことなんて忘れて勝手に死にやがれ。


 何に絶望した?自分の未来か、思うようにならない現実に対してか?絶望するほど希望が溢れているように見えたか?お前の周りのものは。世の中は、人生はクソゲーだって言ったよな。クソに絶望して死んだお前はクソ以下だ。自ら死んだってだけで、お前との記憶が「なんだかいいフィルター」を透かして見えてしまう。自分だけを殺したと思っていないよな。こうやって俺の記憶も壊したんだよ。お前と接している部分の俺の記憶や感情も殺したんだよ。自分勝手にな。俺がカート・コバーンが駄目だといったのは、自殺したからじゃない。俺がカートが駄目だと思うのは産み出した音楽を自ら貶めたからだ。スメルスライクティーンスピリットは自殺した男の歌として生まれたんじゃない。


みんな、いろいろなものを抱えて生きている。思春期の子供にとって、そのもやもやした、いろいろなものってのは、世の中のすべてのような、底のない闇のような、自分の手で回すことのできないほど大きなものに思えるかもしれない。けれど俺たちは、もう、いい大人だ。自分が対しているものくらいは見えているはずだよな。そのうえで死ぬのなら何も言わない…勝手に死にやがれ。お前が何を望み、裏切られ、追い詰めてしまったのか。そんなものは、もう、どうでもいい。いつか、話したよな。俺の父親のこと。俺の父親もお前のように自分で死んだ。お前、俺の話をきいて、なんて言った?俺は自分自身の言葉を裏切る人間は嫌いだ。


お前、こうすることで自分の苦しみをわかってもらおうなんて思ってないよな。お前の苦しみは他者にとってはただの苦痛だ。到底理解なんてできないしもしかすると滑稽に映る人間もいるかもしれない。少なくとも俺はお前のことを敗者だと思う。お前の悩みがどれだけ深く痛みを伴うものだったのか、同情は…しないようにする。俺は俺を生きているから。お前は自分の命だけじゃなくて、いろいろなものを奪っていったんだ。俺たちがいた、最高の時間も簒奪していったんだ。その罪は大きい。俺は誰かの分まで生きるなんて嫌いだ。俺は俺で俺を生きる。「あいつは残された人間の心のなかで生きている」なんて最低だ。俺の心を占めるのは俺だけでいい。俺の人生に影をさすお前はもういらない。光輝く人生を送る俺様を草葉の陰から指をくわえて眺めていろ。勝手に死んでいろ。


 俺らはイーブンだよな。俺はお前を忘れる。だからお前も、お前を苦しめた俺がいるこっち側のこと全部を忘れてくれ。イーブンなら。いっちまった今だから言うけどお前のこと好きじゃなかったよ。お前が夢中になっていたバビロン・ズーはダサかったしさ。背格好が似ていて話やすかったのとたまに学食奢ってくれただろ?だから、それで、俺は、お前と。卒業しても飲むたびに、お前が戻りたいと言っていた、かの美しき俺との大学時代もそんなもんだったわけだ。クソだろ?最高の時間がクソだったお前は何に対しても絶望するべきじゃなかったよ。な、こんなクソまみれの世界に未練ないだろ。苦しみと一緒に棄てちまえよ。


 月末の電話、出られなくて、話聞いてやれなくて、悪かったな。俺のこと憎んだっていいぜ。苦しみがまぎれるくらいに憎んでくれよ。じゃあな、もう忘れるよ。誰も見上げなくなった散っちまった桜のときだけお前のこと、思い出してやるから。

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