Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

中間管理職は二度嫌われる。


 若いころから「嫌い」といわれるとゾクゾクした。変態なのだろうか?僕のことを嫌う人間の顔面を穴のあくほど凝視するのも好きだ。やはり変態なのだろうか?


 今日、会社で年長の女性が、僕を呼びとめ、忠告しておくけど、と前置きしてから「あなたの言動が別の部署の女性陣で評判悪いわよ。改善しなさいよ。嫌われてるわよ」といった。人を好くのも嫌うのも自由だ。ただ、もし僕の言動によって精神的な苦痛を与えたのなら謝らなくてはならない。大きな会社ではないので、僕を嫌っているのが、社内のどのあたりの人たちかは見当はついた。直接、謝罪したい。リバタリアンの立場からオバタリアンに謝罪したい。そして、もし叶うのならば、面と向かって「嫌いだ」と言われたい。心からそう思った。しかし僕の執拗な調査追跡にもかかわらず、そのような女性陣は確認できなかった。


 僕は件の年長女性にたずねた。直接、謝罪に赴いたがそのような事実は確認できなかった。どうも僕の認識が間違っていた。僕に対して文句がある人物を教えてもらえないだろうか、と。すると女性は「相手の立場もあるからそれは言えない」などと言う。よく知らない人に物陰から攻撃されているようで気持ちが悪い。「もし特定できたら攻撃するんじゃないの?」と失礼なことを言う。僕は相手の顔を穴のあくほど凝視したいだけ。だのに、なぜ、歯を食いしばり、キミは言うのだ、そんなにしてまで。


 僕は執拗に食い下がった。嫌われることはなんとも思わないが、誰から嫌われているのかは知りたい。年長女性は頑として口を割らない。本意ではないが、こう言うしかなかった。「営業課長の権限で調べますよ?」半分、冗談だ。だがスイッチだったらしい。年長女性は「そんなことまでするのか」「そういうところが」「あなたの」「嫌いなところなんだ」と声を荒げた。僕を嫌っているのは、その女性本人だった。なぜそのようなことをするのか。直接言えばいいのに。面倒臭いなあ。なんて思ったけれど、良く考えたら気持ちいいからだろう。


 「理由はわからないが奴のことが嫌いだ。なんかムカつく。嫌いといいたい。だが、相手は中間管理職。きっと反撃を食らう。ムカつく」そう思った彼女は架空の女性陣という存在を創造し、そのグループが僕に対して良いイメージを持っていないと設定し、僕からの反撃をかわすと同時に、忠告という形で仇敵である僕から感謝もされる…気持ちいい!そんなふうに考えたのではなかろうか。ひとつ彼女に誤算があったのは、僕の嫌われるとゾクゾクする性分を知らなかったことだろう。


 馬鹿馬鹿しいことだ。面倒くさいことだ。しかし、彼女のいう「そういうところ」つまり「嫌われる理由」がよくわからない。今後の改善のために、僕のどこが嫌いなんだ、嫌いなのか、嫌いなのよ、いいにくいのはわかるけど教えてくれ、僕がキズつかない程度にオブラートにくるんだ言い方で教えてくれ、どこなの、ねえ、どういうところが嫌いなの、ねえ、と聞いたが、「もういいでしょ!」とブチ切れてしまったので追求できなかった。嘘をつくなどの非がある立場のくせにキレるなんて。女性は、更年期は、むずかしい。


 帰宅して、妻に「どうして嫌われたのかわからないんだ…」と愚痴ってみた。すると妻は「そういうことは気にしないでお金を稼ぐためだけに注力すればいいと思いますー」と言った。そうかも。ゾクゾクするために妻に「嫌い」と言ってもらおうと思ったけれどやめておいた。他人じゃない人間にいわれたら凹むだけでゾクゾクできない気がしたのだ。


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