Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

副業でリッチになろう。

 お金がないので副業を考えている。「年収300万時代を生き抜こう」「年収150万で自由に生きていく」 そういう生き方を僕は否定しない。ただ、そうやって定年まで諦念してマネーじゃない生き方を志向するのは僕には合わないというだけだ。
 
 リーマン辞めてフリーになってガポガポ稼げば?と思慮のない人はいうけれども、僕レベルの能力で食べていくのは極めて難しい。僕ひとりならともかく嫁さんもいるし。それに自分の旗を立てて生きることにエネルギーを使うくらいなら、そのエネルギーで別のものを立ててイキたい。それが僕という人間だ。
 
 これは皮肉ではなく、むしろ羨望に近いのだけど、僕には、編集者の言うことそのままに「私って個性的だよねーキテるよねー」つってニッチを狙いの本を出して在庫の山をつくる勇気はないし、人様のツイートを丸パクリして一本の記事を仕立て上げるほどの逞しさはないし、地方に移住して「うわぁ都会と比べてこんなに安い!」と挑発しながら国民年金をおさめていく覚悟もない。残念ながら、そういう自立してやっていくほどの強靭な精神力を僕は持ち合わせていないのだ。誰かに寄生するしかないパラサイト、ゴクツブシなのだ。
 
 節約も出来ない。毎晩酒をがぶがぶ飲みたい。ギャルとウェスティンホテルで遊びたい。数万円するTシャツを着て、首都高を高級車でかっ飛びたい。特上カルビとトロだけを食べていたい。WIIUも欲しい。チャーハンに納豆乗せたい。大リーグ観戦もしたいし小保方さんもサポートしたい。お金が足りない。足りなくなる。
 
 そこで副業。だから副業。本業の合間で本業以上の大金を稼ぎたい。出来れば女性がいる環境。望めるなら女性相手の仕事。あと、僕くらいの年になると、社会的な貢献というのかな、生き甲斐とか生きた証というのかね、どーせやるならそういうものが得られる副業をやりたいと思う。「たわけ。そんな都合のいい仕事、副業があるものか。意識高杉晋作」と非難されそうだけれども、探せばあるものでそれがこれ。話は初夏にさかのぼる。
 

f:id:Delete_All:20141119174509j:plain

【リッチ女性の日常サポート】 ドライブ。食事。旅行同伴。週二三回でオッケー。高収入。中高年でも出来る。魅惑的な文句と圧倒的ボランティア感。そしてポスター全体から漂う、ポップな安心感。街で噂の新ビジネスらしい。知らなかったのは僕だけか。くそ。僕の社会貢献願望とも合致していた。震災応援の文字があっても会社名の記載がないのは、わたしたちはピュアなボランティア事業であるため社名を公にしたくないという節度のあらわれに違いない。
 
  そんな企業姿勢に感銘を受けた僕は迷わずフリーダイアルにTEL。具体的な仕事と収入を聞くためにTEL。女性オペレーターが出た。高まる信用。かぶりつくように「ポスターを見て電話を差し上げたのですが」と僕。「お名前とご連絡先を教えていただけますか?」「いや、まだ本気で働くと決めてないのですが、つーか、あれです仕事内容とか教えていただけないでしょうか。ポスターだとファジーなので」「お名前とご連絡を教えていただけませんか?」
 
 派遣先の女性とか交通費とかユニフォームとかそういうことについて、ほぼ一方的に質問を浴びせたが、お名前を、連絡先を、とはぐらかされ、ついに登録料の話になった。「登録料って私が払うのですか?」「そうです。29800円をお支払いいただき登録していただきます」 なるほど登録なのか。地獄の沙汰も金次第。僕は性格がいいので色々聞いてしまう。やれやれ。
 
 「登録と仰いましたが、これは在籍型出向にあたるのですか、それとも移籍型になるのでしょうか」「…」僕もよくわからない。はったりだから。へんじがない。まるでしかばねのようだ。僕は続ける。「登録料は29800円ということですが、これは外税ですが内税価格ですか。8パーセント大きいんですよ」「非課税取引になります」「え?ホントに間違いないですか、家内にリッチ女性サポートをしたいからつって相談してお支払いしなければならないので、そのへんのところクリアーにしていただきたいのですけど。ハチパー洒落にならない額ですよ。大丈夫ですか?内税じゃなくて非課税。非合法の間違いじゃなくて?」「問題ございません」動じない。マシンなのかもしれない。
 
 「登録料の税の取扱については承知いたしました。それでは登録料の振込みについてお聞きしたいのですがよろしいでしょうか」「どうぞ」「振込みの際にかかる振込み手数料はどちらが負担するのでしょうか」「それは登録される側になります」「なんでですか?」「詳細につきましては改めて担当からご連絡を差し上げますのでお名前とご連絡先を…」
 
 「それとこういったビジネスははじめてで不安なので具体的な面接から配属までのスケジュールや研修について教えていただきたいのですが」「詳しい話は担当の者から差し上げるのでお名前とご連絡先を…」「いやいやいや、さっきからそう仰いますけれど、御社が売名とか詐欺とかそういうのではないのは、重々承知しておりますが、先に名乗るのがマナーってもんでしょ。御社の社名と所在地教えていただけますか」先に電話をかけたのは僕だが。自分のことはいくらでも棚にあげられる。「後ほど担当者から詳細をご連絡差し上げますので」「あと、ぶっちゃけいくら稼げますか。いやらしい話になりますけれど」「担当者からご連絡を差し上げますので、お名前とご連絡先を」「もうひとつ。給与支払いの際に登録料天引きってわけにはいけませんかねえ。今、財布に余裕がなくって振込み手数料を負担するのはちょっと」「登録料の天引きはしておりません」「あとひとつ質問よろしいですか」「なんでしょうか」「震災復興応援ってなんですか」と言ってから僕は「改めてご連絡を差し上げますのでお名前とーご連絡先をー」と続けてみた。
 
 電話はそこで切れてしまった。そのあと何回かかけなおしたけれど繋がることはなかった。緊張のあまり悪ふざけしてしまったからだろうか。あれだけいい仕事だ、誰か他の人間に取られてしまったと思うと悔しくて眠れない。僕はまだ副業を探し続けている。自分にあった副業を見つけるのは本当に難しい。
  
※※
 
 twitter
 
・「かみぷろ」さんでエッセイ連載中。
 
「人間だもの。」
 
・ぐるなびさんの「みんなのごはん」にてエッセイ連載中。
「フミコフミオの夫婦前菜」
 
・リクナビNEXTさんに寄稿しとります。