Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

例の新幹線のぞみ号に乗ってました。

ツイッターに投稿したけれども、先日、たまたまガソリン放火事件の起きた新幹線のぞみ号に乗っていた。なぜ平日昼間の新幹線に乗っていたのかというと、所用で名古屋の親戚に会いに行くつもりだったからだ。僕は療養のため仕事を休んでいるのだけど2週間ぶりに公共交通機関を利用したらこんな前代未聞の事件に遭ってしまうのだから、運がいいのか悪いのかわからない。ちなみにここ数年は年に一度の割合で閉じ込められている。

 
事件については迷惑で不愉快な話以外の何でもなく、犠牲者の方のご冥福をお祈りするしかない。よく、日本人は犠牲が出るような大きな事件事故の際、大騒ぎせずに冷静に対応すると言われるけれども、僕はもう少し騒いだ方がいいんじゃね?と思うこともある。騒ぐことで動くことってある。っていうか騒がないとわからないタイプの人間って確実にいるから。騒がないからわかってよ、というのは相手の能力や資質に対する過信だと僕は思うのだ。話はちょっと逸れるけれど、最近、海外から褒められることが少ないからなのかやたら日本って実はスゴイ的なテレビ番組が増えていて、そのスゴイのなかに日本の技術とともに冷静な対応も含まれてたりして、僕は少し危険な兆候を感じている。閑話休題。実際、新横浜駅から5両目の車輌に乗り、ヘッドホンで音楽を聴きながら目を閉じて瞑想していた僕は、周りが静かすぎることもあって、事件に気づくのが遅れてしまった。
 

新幹線が小田原の手前で停車したとき、5両目には煙もパニックもなかったので、ヘッドホンのジミヘンに遮られて車内アナウンスを聞くことができなかった僕は、まさか自分の乗る電車で事故が起きたとは分からなかったのである。日本おとなしすぎる。僕が事件に気づいたのは、隣にいたおばはん二人にヒザを叩かれたからだ。おばはんは僕に「この新幹線が燃えている」などと物騒なことを笑顔で言う。おばはんの笑顔からは、ジミヘンのせいで事件に気づいていない僕を動揺させまいという気づかいが感じられて、思わずその心の温かさに胸がいっぱいになりかけたけど、続けて「今日中に京都に行けるのかしらー」「ねー」「今日中に京都に行けないのかしらー」「ねー」と自分の都合だけを考え、危機感だけを煽り続けるおばはん二人の醜態を見て僕は安易に胸をいっぱいにしないで良かったと思った。
 
おばはんを無視して命を守るための活動を開始した。脱出すべきか。周りを観察。新幹線は何もない山間部に止まっていた。エアコンが効いていないようで車内温度が急激に上がっている。前の車輌から逃げてきた人の中には煤で汚れている人もいた。外に出られるドアは開放されていたけれども、そこに殺到して表に出ようとする人は皆無だった。
 
表の状況を確認しようと窓を覗こうとしたが、運がいいのか悪いのかわからん僕は三列シートの廊下側。「窓が開かないのー」「こういうとき困るのよねー窓開かないとー」「ダメな設計よねー」と新幹線のコンセプトにダメ出しをはじめたおばはんズの向こう側に薄く白い煙が流れているのを確認。情報が欲しい。電池切れのスマホ充電したいと思ったけれどもコンセントは窓側にひとつ設置されているだけで、そこにはおばはんのシニア向けガラケーがすでに刺さっていて軽く絶望。ひとまずアナウンスからも周りの様子からも危険が急迫しているようには思えなかったので、体力を浪費しないように、そのままその場で待機することにした。
 
隣のおばはんは、今日中にー、京都にーと半世紀ぶりの修学旅行にキョウキョウ騒いだあとで僕に「ちょっとお兄さん」と声を掛け「おにぎりあげるから、ちょっと先頭の様子を見てきて」と無茶な要請をしてきた。「死ぬわ!」思わず声が出てしまう。おにぎり並みに軽い、僕の命。そのとき僕は、日本の人は事件事故で大騒ぎをしないのではなく、大騒ぎしないように見せるのがうまいだけなのではないだろうかと思った。それを節度とか冷静とかいうのかもしれないけれど。
 
まあいい。いずれにせよ、大きな事件にも関わらずこれがのんびりとしたレポートになっているのは、日本人が危機に際して沈着冷静に行動するという不確定な要素に頼らない、新幹線の乗務員の対応が適切であったからだ。それもあって三時間ほど経って小田原駅に着いたときのマスコミの騒ぎようと警察な不慣れさはやたら気になった。とりあえず疲れてるんだからさっつー苛立ちもあるけど。帰宅してニュースをみたらやたら センセーショナルに報道されていて、現場にいた僕でさえ、なんか別の事件のニュースみたいだと思ってしまった。嫁さんから「君はまるで巻き込まれてばかりで何もしないジョン・マクレーンですね」と褒められました。ノイズなんちゃら機能つきのヘッドフォンは外部の音が遮断されてしまうのでご利用は計画的に。その後体調悪化。本厄だわ。