Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

やたら体を触ってくる女の人ってタマにいるよね

 季節外れの台風が襲来したような非人間的な朝は、「濡れちゃった~」「超ぐちょぐちょ~~」そんな、女子高生たちの言葉だけが僕を人間にする。ダイヤの乱れた電車の中で、心を乱さないよう、鼻から口へ、呼吸を切り替えやり過ごす。もし可憐な花の匂いを嗅いでしまったら…。想像するだけで僕は頭を抱えてしまう。君子危うきに近寄らずなのだ。

 

 ふと、あの暑い夏の苦い記憶が蘇る。炎天下の外回り営業でフラフラになった僕は、暑さで溶けそうな電車の床を睨みつけることで、精神が散り散りにならないように耐えていた。しばらくして、たまたま僕の視線の先に立っていたミニスカ女子高生から「じろじろ見てんじゃねーよ。ハゲ」と恫喝された。たまらず飛び降りた次の駅、「ハゲ…ハゲ…ハゲ?」と呻きながら生え際を確認した、あんな苦しい思いは、もう、したくない。正直に告白しよう。諸君、僕は、女子大生以外の若い女性が好きではない。往々にしてこういった需要と供給の不一致は悲劇を生む。そういうものだ。ずいぶんと時間が経ってしまったけれど、あの女子高生があまり幸せでない人生を送ってくれていればいいと思う。

 

 東海地方の支社に、やたら僕の体を触ってくる女性がいる。それが黒木メイサみたいなエキゾチックな25才美女なので対応に苦しむ。触り魔の彼女は、打ち合わせをしている最中、僕が何か言うたび、肩、腕、太ももに触れたり、軽く掌を握ってきたりするのだ。嫁さんにも握られたことないのに!全く嬉しくない。ティーピーオーをわきまえていないのも、プチ美人局的な陰謀めいたものを感じるのも、他のアブラギッシュな男たちに触れた不浄の手で触られるのも、そして何より彼女の行動原理がわからないことが、嫌だったのだ。

 

 女性に触るのが嫌なのではない。僕の言いたいのはこういうことなんだ。僕は・触るのが・好きだ。実際、タッチ厳禁のキャバクラ「人魚姫(仮)」で泥酔した僕は、不覚にもギャルに軽くタッチしてしまい「相模湾に沈みたくないよね?」と広域で暴力を展開なさっていそうな黒服からリトルマーメイドな世界に誘われた過去があるくらいなのだ。決してお触り否定論者ではないのだ。仕事中はヤメて欲しい。それだけのことなのだ。

 

 彼女に「やめてくれないかな」と注意したこともある。しかし、癖なんだろうね、手を握るようなことはなくなったけれど、肩や腕への軽いタッチはおさまる気配がない。不勉強でわからないが、他人の体に触れていないと死んでしまう病なのかもしれない。僕が徹底的に拒否をしたら、悲嘆に暮れて、絶望のあまり、名鉄こと名古屋鉄道を止めてしまうかもしれない。その原因の一部に僕はなりたくない。重すぎる。


 同僚に「あのコやたら触ってくるよね?」と同意を求めてみたら、そんな事実はないとのこと。同僚は、僕が課長という立場を利用して、彼女に触ることを強要しているのではと疑ってきたのでアホらしくなる。他のスタッフからも「課長だけですよ!」「役得」「よくも支社のアイドルを!」「汚い…」「神奈川に帰れ」「執行猶予」などと言われる始末。

 

 どうやら僕は疎まれていたらしい。女性の謎行動を追及しているうちに、普段自分がどのように見られているかを突きつけられて悲しい。お触りする彼女と僕、需要と供給のミスマッチなどではなかった。彼女がなぜ僕を触ってくるのか?その行動原理はわからないけれど、嫌われていることを僕に自覚させるためのリトマス試験紙的な行動だった。そう、考えると腑に落ちる。

 

 いいかい?ふさわしくない場所でやたら体に触れてくる人に遭ったら、敵前逃亡と嘲笑されてもかまわない、何はともあれ、逃げることだ。僕の犠牲を無駄にするな。今夜、僕は、枕がぐちょぐちょになるまで泣くつもりでいる。

 

(この文章は、待ち合わせの20分間を利用して書かれたものである)