Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

レス状態にある妻にダメ元でお願いしたらオッケーが出た。

妻が実家大掃除のために一時的に帰省しているため、大晦日の夕方まで期間限定の独身だ。もっとも、大晦日の昼過ぎまで仕事なので僕が自由に使える時間は自ずと夜だけになる。「さて、この好機に何をしよう…」と考えたところで自宅に呼べるような欲求不満でおじさま好きの女子大生が知り合いがいるはずもなく、工ロ動画視聴に落ち着く。

僕ら夫婦は寝室が別だ。寝室で寝起きする妻。僕は寝室の隣に設けられたウォークインタイプのクローゼットを寝室に見立て、布団、オリオン電機製の液晶テレビジョン、レコーダ、ゲーム機、加湿器、除湿器を持ち込み快適なナイトライフを送っている。唯一の難点は工ロ動画試聴だ。妻が寝静まるのを待ち、布団を被り、声をひそめて試聴する。隠れキリシタンや潜水艦乗組員のように、息をひそめ、声を落とし…そんなルーティーンに、僕はもう疲れ切っていた。

ヘッドフォンやイヤーフォンは使用しない。男優に耳もとで囁かれているような気がしてイヤだったのもあるが、妻が目を覚ました際に気づくのが遅れるからだ。夜中に尿意を催して目覚めた妻が、隣室で布団を被って自家発電している僕の姿を目にする…そんな地獄絵図は現実化したくない。耳を塞いでいると自分の声量が把握出来ないってのもある。僕はかつて女性からあのときの声が大きいと言われたことがある。僕は・あのときの・声が・大きい。その言葉が僕の心に決して小さくはない傷を残したのは間違いない。実のところ、僕の声量はどうなのだろう?一般的成人男性と比較したことも定量的に計測したこともないので何ともいえない。平均的であってほしいと祈るばかりだ。

妻が不在となれば近所迷惑にならない程度の音を出すことが出来る。妻の耳だけではない。妻の目や鼻を気にする必要もない。布団も被らず、生まれたときの姿になり、スマートフォンのちまちました画面を卒業しデスクトップパソコンの大画面でエキサイティン!という調子に気持ちは高まっていたのだが、いざ試聴という段階に至るとどうにもよろしくない。テンションが急落してしまう。

そして僕は気付いてしまう。コンテンツの中身に対してではなく、隠れて試聴する行為に興奮を覚えていたのだと。妻の目と耳と鼻があったからこそのエキサイティンだったのだと。僕は知らないうちにそういう肉体に自分を調教していたのだ。

今朝妻から電話があった。あれこれ年末年始の打ち合わせを終えてから僕は妻に言った。「この2日間でよくわかった。僕は君がいないとどうにも調子が出ないらしい」「どうしたのですか?」僕はダメ元でお願いしてみた。「今夜から僕を、僕のやることなすこと全てを注意力をもってよく観察してほしい。もっと僕の声を聞いてほしい」「それくらいならいいですよ」意外にも快諾であった。マンモスうれP。大晦日の夜。僕は妻の前で一匹の獣となる。凶暴でわがままで独りよがりのモンスターである僕には格闘技も紅白歌合戦も必要ない。

(2015年も1年間ありがとう。来年もよろしく。なお、この文章は仕事納めの喜びを原動力に16分間で書かれたものである)