Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

あの頃メガドライブと

 ファミコン、ディスクシステム、スーパーファミコン、バーチャルボーイ、64、ゲームキューブ、wii、セガSG1000、セガ・マークⅢ、メガドライブ、セガサターン、ドリームキャスト、プレイステーション、PS2、xbox360…これが僕が所有した据え置きゲーム機だ(たぶん。アルカディアも持っていた気がするけど、実家になかったので幻覚かもしれない。これに携帯機が加わる)。金満野郎が!と罵倒されそうだが、半数は、ゲーム好き、かつ、飽きっぽい従兄弟の兄ちゃんから譲ってもらったものだったりする。このなかでもっとも印象に残っているものは、バーチャルボーイといえればネタ的に面白いところだけれど、人間性を疑われるので、公式にはメガドライブということにしている。

 

 1988年。当時中学3年生だった僕は、いとうせいこうさんのCM(「ビジュアルショック、スピードショック、サウンドショック」)が流れるたびに興奮したものだ。たぶん、あとにも先にもゲーム機のCMであれほど胸が高鳴ったことはない。もちろんウン万円もするゲーム機だったので、中学生の小遣いでは足りず、親に「期末テストで学年一位になったらメガドライブを買ってくれ」と掛け合い、見事にその目標を達成(勉強は嫌いだったけど得意だった)、発売から数か月たった1988年の師走、我が家にメガドライブがやってくることになったのだ。一軒家を襲うビジュアルショック!スピードショック!サウンドショック!

 

 ソフトを買うお金は一本分しかなかったので、「おそ松さん」ブームまっただ中の2016年ならば「おそ松くん はちゃめちゃ劇場」をチョイスしているが、「獣王記」を選んだ。カートリッジを黒い機体に差し込んでオン。はじめての16ビット、はじめてのビジュアルショック、スピードショック、サウンドショック…は感受性の乏しい僕にはよくわからなかった。そこで、客観的に評価していただこうと思い、ボンクラ友人たちを自宅に招き、メガドライブおよび「獣王記」をお披露目することにした。ファミコンしかやったことがないボンクラに16ビットのビジュアルショック、スピードショック、サウンドショックを与えてショック死させてやろうとしたのだ。

 

 電源オン。「獣王記」を皆にプレイさせた。ショックが大きすぎたのだろうね、皆、無言。サウンドオブサイレンスに耐えきれなくなった僕は、おそるおそる感想をうながした。こういっちゃなんだけど、という不吉な前置きのあとにボンクラの口をついて出てきたのは、「獣王記面白くないよね」「スーマリ3の方が楽しい」「コントローラー重いよ」「本体黒い」という微妙な評価であった。「ウン。確かに」僕は悲しみをこらえながらボンクラたちに応えたのだった。このプレゼンテーションの失敗は「獣王記ショック」として長く僕の心の中にあり続けた。それからの僕の人生は、いいかえれば、「獣王記ショック」を払拭するためのリベンジの機会を待っていただけの人生だった。

 

 スーパーファミコンとプレイステーションが爆裂した1990年代、プレイステーション2が占領した2000年代が過ぎていき、三十路を迎えようとしていた2003年。ついに僕は「獣王記」に対するリベンジを叶えるときを迎えた。それは、いわば、代替行為であった。大人の事情で詳細な説明は省かせていただくが、僕は獣王ならぬ獣 皇という、獣と人類が合体してパワーアップするという内容の、いわばリアル「獣王記」ともいうべき大人向け映像作品を、半地下のショップで購入視聴し、1988年に体感するはずだったビジュアルショック、スピードショック、サウンドショックを全身に浴びることでリベンジを果たしたのだ。結婚後、EDを患い夜の獣になれなくなった僕が、当該DVDを妻に発見されて一時的な別居にあったのは、「獣王記」の呪いだったのかもしれない。

 

 最近、3DSのセガ3D復刻プロジェクトの中で「獣王記」がリメイクされたので、約四半世紀ぶりにプレイしてみた。

 

セガ3D復刻アーカイブス1&2 ダブルパック

セガ3D復刻アーカイブス1&2 ダブルパック

 

  あの頃と同じように楽しかったが、やはり、作りこまれていたスーマリ3とは対照的な、大味なゲームだった。今はオンラインでゲームするのが普通になってしまったけれど、みんなで誰かの家に集まり、コードの繋がったコントローラーを奪い合うようにして、ゲームしていた、あの頃が時々懐かしくなるときがある。メガドライブは僕にとって、そういう記憶を呼び起こすタイムマシンなのだ。他のどんなゲーム機よりも。今だから言える。獣王記、サイコー。メガドライブ、サイコー。セガ、サイコー。だけどな。サンダーブレード、お前だけはダメだ。

(このおセンチな文章は休憩中の貴重な22分間を活かして書かれた)