認めたくないが転職に失敗したらしい。最後の希望、返事待ちになっていた会社からお断りのメールが届いたのだ。お約束の「今回はご縁が…」メール。ピュアな僕はその文面を信じて「今回というなら次回がありますよね。いつでしょうか?」と返事を出しておいた。今回は残念な結果になってしまったがいい関係が築けたら嬉しい。
今年2月からの転職活動で面接まで辿り着いたのは計8社。この数字が多いのか少ないのかわからないが自分なりには老体に鞭を打って頑張ったほうだと思う。僕はプライベートでサーフィンをやっているのだが、サーフィンと転職活動はどことなく似ている。日焼けしてカブトムシ色をした小汚いサーファーたちと大きな波を待ち続け、波が来たら、挑む。うまく乗れなかったらまた次の大波が来るのを信じて待つ。そこにあるのは信じることだけだ。
転職活動もここからしばらくは凪に相当する時季になるようだ。転職活動中に採用担当者から言われたのだが、4月から5月の新入社員がやってくる時期にフォースの暗黒面に堕ちた僕のような中途採用がいると新人が汚染されていまうから出来るだけ避けたいと言われた。汚染物質扱い。きっつー。フレッシャーズ許さん。
確かに僕は暗黒面に墜ちている。転職にしくじったのも強すぎる猜疑心。皮肉の多さ。執拗さ。抑えきれない煩悩。それら暗黒面に起因している。どれもこれも先天的なものなので親を恨むしかない。今、転職失敗の分析を自分なりにしている。猜疑心と煩悩が主要因だと思われる。たとえば各転職サイトの経歴書的なものを記入しようとするとき《経歴や資格だけでなく興味あるものやりたいことをアッピールしていきましょう!》と極めてアッパーな説明文があるのだけれども人生の折り返し地点を越えた僕は困惑するばかり。やりたいことは皆無。やりたくないことしかない。
さすがにそう記入するのは人として終わっているので空白のままにしておく。すると《経歴書に不備があります!》《不備アリ!》《不備!》と色文字で警告を受けてしまう。確かに空白はよろしくないと反省し無理矢理考えてみる。やりたいこと。やりたい。やりたい。女子大生。いかんいかんそれは。やりたいこと。やりたい。やりたい。女子大生。あふれんばかりの煩悩のせいで、やりたいの先には女子大生しか浮かばなかった。はたして経歴書のやりたいこととして女子大生を挙げてもいいのだろうか。僕にはわからない。やれやれだ。
ここで強い猜疑心が発動してしまう。《やりたい 女子大生》と記入したら、おそらく危険人物としてマークされ、秘密裏に労働基準法で禁じられている「秘密の記号」を付与されブラックリスト掲載、それが全国の事業主に配られて社会的に抹殺されるにちがいない。このように強力な煩悩と猜疑心により経歴書を埋めることさえかなわない。面接の際は自分をアッピールすることを忘れてまで相手の弱点や矛盾を探すことに集中してしまう。このように呪われた性分をしているので転職活動がなかなかうまくいかない。
だが、反省は出来ている。今は準備を整えて次の波を待ちたい。なお、あたかも辛抱強く波が来るのを信じ、トライし続けるサーファーであるかのように語ってきたが嘘である。実際の僕は海岸に腰を下ろしたまま「あーでもない」「こーでもない」と波評論をするだけでなかなか波に乗らず、次の波を待つうちにタイムオーバーになってしまうような消極的スタイルのサーファー。目の前の波を信じられないダメ・サーファー。転職活動もサーフスタイル同様に、面接中に次の会社の方が良いのではないかという疑いが頭を支配してしまう。次、次、次。そう思って適当にやりすごしているうちに気が付いたら転職にしくじっていたのである。(所要時間19分)