Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

青森の写真コンテストのこと

青森の写真コンテストで最高賞内定作品が被写体人物が撮影後自殺していたことを理由に内定を取り消されたらしい。遺族の了承もあったというのにだ。父を同じ形で喪っている僕はあまりにも自分の記憶と被ってしまって、またかよってなってしまった。父の死後、僕は親族たちにその死因を口外しないほうがいいと言われた。「恥ずかしいものだから」「みっともないだろう?」まだハイティーンだった僕は忠告に忠実に従って葬儀に訪れた父の学友や元同僚たちに父の死について尋ねられたびに嘘の交通事故や幻の闘病生活や名誉の殉職をこしらえたものだ。父の人生を嘘で歪めたのだ。僕は親戚のおっさんに隠蔽工作をしなければならない理由を聞いた。何が恥ずかしいのか知りたかったのだ。おっさんは、自死は本人にとって恥ずかしいものだから公にすべきものではない、これは故人の名誉のためだと言った。僕はその理由に納得してしまった。なんとなくそういう空気に飲み込まれてしまったのだ。今だからわかる。おっさんの教えてくれた理由は嘘だったと。守ろうとしたのは故人の名誉でも遺族の名誉でもなく、その外側の故人と繋がりのあった人の名誉だった。ゲスな言い方をするなら守ろうとしたのはたかが世間体だ。最近僕は思うのだけど自殺は嘘で塗り固めて隠さなければならないほど恥ずかしいことなのだろうか。突き詰めれば人生の最後が自死であっただけだ。なぜ故人の人生を臭いものに蓋をするようにしなければならないのだろう?そもそも隠さなきゃならないほど自死ってきっつーなことなのだろうか。マイナスなのだろうか。違う。僕はよくわかるのだが遺族にとって一番辛いのは故人を変に特別視されることなのだ。当該コンテストがどういう意図で処分を下したか今のところ僕の知る限りわからないし公表もされないだろうけど、主催者のクソ世間体を気にしてのことならば、被写体の人生を否定していて失礼だし本当にくだらないことだと僕は思う。(所要時間9分)