Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』(ふろむだ著)は控えめにいって人生を変えうる悪魔の書なのでみんな読んだほうがいい。

ブログ「分裂勘違い君劇場」のふろむだ氏(id:fromdusktildawn)の『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』を読んだ。このエントリのタイトルにあるように人生を変えうる本だと思った。

 ひとことでいえば、この本は「錯覚資産」についての本である。もし、「錯覚資産」なる言葉に引っかかったなら、こんな文章など読まずに、今すぐ、事前情報なく、この本『人生は、運よりも実力よりも…』を手に取ってもらいたい。僕はインターネット発でタイトルが長い書籍は、ジャンルがなんであれ、敬遠するように決めている。タイトルや目次以上の内容がないものが多く、時間の無駄になるからである。この『人生は、運よりも実力よりも…』もそのルールに則れば敬遠することになるのだが、あら不思議、読み始めたら読み終えるまで手を止めることが出来なかった。なぜか?僕の人生に起こってきた説明のできない成功事例、その要因を僕は「謎」「ワンダー」「ミステリー」「ラッキー」という曖昧な言葉で逃げていたけれど、それらを心理学の観点から見事に解明していたからである。

「錯覚資産」とは著者の造語で「他者による自分に有利な勘違い」を意味する。人間は錯覚する生き物であり、その錯覚を自分に有利に利用し、資産とすることが成功への道筋になると著者は語る。恐ろしいのは、人間は錯覚していることに気づかない(無意識)こと、そして錯覚資産は「雪だるま式」に大きくなって作用するので、それを使っている人と使っていない人とでは大きな差が出てくることだ。

「勝ちに不思議の勝ちあり 負けに不思議の負けなし」という有名な言葉がある。この言葉にある「不思議」とは「実力以外の不可解な要因(勝因・敗因)」と僕は考えているのだが、それを「錯覚資産」という概念で明確に説明しているのがこの本である。現実世界は実力がストレートに反映するようなピュアな世界ではない。そういうとき人は「運」という言葉で結果を受け入れてしまいがちだ(成功=「実力+運」)。だが著者は錯覚資産という概念からここで新たな成功の公式を提示している(成功=「実力+運+錯覚資産」)。さらに錯覚資産は実力にも運にも働きかけ、好転をもたらしてくれるとしている(先述の「雪だるま式」)。

私事になるが、僕は昨年から働きはじめた会社で、いい感じに働いている。前に勤めていた会社と同じ業界で、僕の実力が大幅にアップしたわけではない。だが実際には前よりもいい待遇で雇われている。僕はこれを単に運が良かったと思っていた。だが、この本を読みながら我がしょぼい人生を振り返ったとき、無意識のうちに錯覚資産を活用していたことに気づいた。面接の際に、自分を売り込むために資料をつくり自分をプレゼンした。その中身は僕がやってきた実績や仕事への取組みで、会社に寄与してきた数字それから役職を時系列でつくったものだ。今の会社のボスは「役職など関係なく実力で僕を採用した」と言っていたが、たかだか1時間程度の面談で人間の真の実力などはかれるわけがない。

つまり、彼は採用には関係ないといいつつ、「無意識のうちに」僕の役職と達成してきた数字(実績)から、僕の実力を「上方修正」して採用に至ったのだ。今だからわかるが「無意識のうちに」「上方修正」してしまう、これが錯覚資産なのだ。僕は知らず知らずのうちに錯覚資産を活用して、よりよい環境(役職と会社内での権力)を手に入れ、ボスの信頼を手に入れつつ、それに応えようと実力を付けつつある(雪だるま式!)。まさに「錯覚資産」である。おそらく、己の実力でサクセスしたと考えていらっしゃる成功者のほとんどは、何らかのカタチで錯覚資産を活用しているのではないだろうか。そういえば前に関わったクソ上司も「俺はスゴイ…」「俺はNYのビジネース界を生き抜いてきた…」「愛犬の名は…ノルマだ…」とスゴイアッピールをしていたのも下手くそな錯覚資産の活用だったのかもしれない(ノー実力だったのが発覚して失脚したけれど)。

著者は、僕のような心理学ビギナーでもわかるように、人間の心の動きから錯覚を丁寧に説明し、そこから錯覚資産という概念とその効果についてスムースに解説している。最終的には、錯覚資産を意識的に活用する方法や運を引き寄せる方法(運をコントロールするではない)まで解説している。まさに控えめにいって悪魔の書である。そして、著者はスキルアップや実力主義を掲げる世のビジネス本やサクセス本を欺瞞として明確に否定している。そう、この長いタイトルの本は究極のサクセス本であると同時に世にあるサクセス本を否定している。それがもうひとつの悪魔の書と呼んだ所以である。

錯覚資産は、それを知っているかどうかだけでも、アドバンテージを得られる概念である。それを成功のために使うのか、失敗を回避するためにつかうのか、それはあなた次第。『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』は、単なる仕事サクセス本ではなく、あなたの人生における成功というものに新たな光をあてて解読してくれる人生の指南書になりうる本だ。長々と書いてきたけれど言いたいことは「わかりやすくて面白いよ」というひとことだったりする。おすすめ。(所要時間23分) 

人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている

人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている