Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

「君たちはどう休むか」に絶望した。

11月4日の朝日新聞グローブの特集「君たちはどう休むか」が非常に面白かった。「技術の発達で繋がりやすくなった現代における、持続的に働くための休み方」をテーマに米、独、仏、以の例を列挙していた。特集内ではそれを戦略的休息とも呼んでいる。ボスから就業時間短縮への施策案を宿題にされているので、個人的にもタイムリーであった。

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特集で紹介されていた仕事と生活(休み)についての考え方は大きく分けて2つ。ひとつは仕事と生活を完全に分ける。もうひとつは仕事と生活を融合させる。後者(融合)は「ワーク・ライフ・インテグレーション」と呼ばれ、すでに独の有名スポーツメーカーA社で導入されている、ワークとライフを分けるのは難しいし無理っぽいからいっそのこと分けるのをやめて融合させてしまおうという考え方である。冗談か奇策のようであるが、施策はまともで、社内にジムやスポーツ施設を設置していつでもリフレッシュ出来るようにし、上司同意のうえで勤務時間の振り分け可能とする、月20パーセントは就業場所を自由とする等々、会社内で休めるような体制を築き、仕事に生活(休み)を取り込もうとしている(逆か?)。記事にはないが、おそらくA社は社員のケアがしっかりしているからうまくいっているが、あくまで仕事と生活のコントロールの責任は個人にあるので、額面通り制度にしたら、うまく自分の仕事をコントロール出来ない人にとっては仕事と生活が悪魔合体する、ブラックな無理ゲーになってしまうだろう。ちなみに特集にも「ワークライフインテグレーションは素晴らしい働き方だが私には無理っす」と語る燃え尽き症候群の談話がある。

仕事と生活を完全に分ける例として米のIT企業が紹介されている。オフィス廃止。全社員リモートワーク。結果さえ出せば就業時間は問題にならず休暇も自由!CEO曰く「休みとは仕事を何もせず、会社について考えないこと」。最高すぎる。理想郷。これをウチに導入したい。どのような愛の道を辿ればこのような環境になるのだろうか。ところが愛の道どころか地獄紀行であった。CEOは「どうしたら最も生産的な働き方ができるのか」考えた。そして気づいた。休日という概念をなくして週7日働いて、1日の中で仕事と休みのバランスを取ればいいではないか。ウソーン!日本海軍の月月火水木金金がここに大復活。「1日5時間半に仕事を抑えれば、労働は週40時間以下になるぞ!」と彼は考えた!きっつー!ずっと仕事じゃん、アホちゃいますか、そう、凡人の僕は思ってしまう。だが凡人には天才の発想は理解できないものだ。CEOは実験した。すると、実験してみないとわからないものがあるのだね、実験はわずか2週間で崩壊、結果は「働く時間は減ったのに燃え尽きてしまった」。丸1日休むのと同じようには心身は回復せず筋肉を痛め1週間休むはめになるなど凡人からみてもバカみたいな実験は散々な結果に終わったのである。凡人に見えていても天才には見えないことがあるらしい。だが人間は経験からでしか学べない。このバカバカしい失敗が理想的な環境を実現するのに必要だったのだから決して無駄ではなかった。

僕がボスから与えられている宿題のヒントがここにはある。しかし、いきなりオフィス廃止!リモートワーク!成果さえだせば就業時間廃止で休暇自由!などと提案しても、実現は難しいだろう。なので諸事情を忖度して、いろいろな実験の実施を提案するつもりでいる。先ずは忌々しいオフィスを爆破解体し、理想郷の礎にするのを提案したい。新たな秩序は破壊から生まれると信じている。

休み方について考えるのは大事だ。だが「働くために休む」ではなく「休むために働く」「休むために休む」ことが大切であって、言いかえれば「ドラえもんの『ぐうたらの日』」こそが本来の休みのあり方だろう。「戦略的休息」「生産性をあげるため、持続的に働くための休み方」という考えを出発点にしているかぎり、どれだけ休みについて考えても、僕らが本当に休むことなど絶対に出来ない、「君たちはどう休むか」は、そんな絶望的な宣告をしているような気がしてならないのだ。(所要時間15分)