Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

就業規則変更で社員の秘められていた能力が見つかった。

就業規則の変更が通達された(労基届出済み)。内容は、会社や取引先の車両や機器を破壊殲滅したら、その回復にかかった分を負担させることもあるよー、情状の余地はあるけどねー、というもの。これまでは営業車でチキンレースをして大破させるような、マッドで悪質な行為の結果でないかぎり、無条件で会社が全額負担していた。前に勤めていた会社では、無条件で事故を起こしたら社員全額負担の無慈悲なフリーザ様対応だった。同じ世界とは思えない。その「悪気があって壊す人はいない…」という性善説に拠る無条件を今回、改めたのである。

きっかけは僕が任されている営業開発部在籍の、僕の入社前から事故を起こしまくっているベテラン社員である。優秀なスタッフの中で、「温厚な性格」と「平均的な仕事ぶり」という得やすい資質を併せ持つ彼は、今年になってから、コンクリ壁、電柱、金網を相手に自爆事故を3回起こしており、先日もまたコンクリ自爆。その彼が事故報告書の原因と思われるものに「生活苦」と記してきたのを受け、部長会議に出ている幹部一同、「さすがにこれは…」と反省の無さぶりに「ぐむむ…」と唸ったのである。

部下が事故を起こしました。 - Everything you've ever Dreamed

部長会議で、僕は、彼に対して特に思い入れはないが、他の部下たちから冷酷な上司と誤解されたくないので、彼を弁護した。「彼は左足ブレーキ右足アクセルという特殊な運転技法を用いている。全部それを教えた教習所のせい」「毎日車で外回りをしていれば事故を起こす可能性はゼロではない。職種が悪い」「暑すぎた夏の疲れが出たのかも。異常気象が悪い」と。いいかげんな弁護に聞こえたらしく、「フザけているのか」「ちゃんと指導しろ」「屁理屈はやめろ」部長連中の非難は熾烈を極めた。おかしい。僕が入社する以前から彼は事故を起こしていたのに、なぜ、今。きっつー。おそらくこの抵抗は、外様で新参者の僕に対するもの。負けられない。部下を守ること、それは己を守ること。つまりこれは僕の戦い。そんな強い気持ちはあったが、気持ちだけではどうにもならないのが僕たちが生きるこの世界のリアル。決壊する堤防から溢れ出る激流を、紙コップで汲んでは戻すような、僕のささやかな抵抗は、大勢を覆すに至らず、就業規則の変更へと繋がった次第である。

部長会議のあと、「安全運転をお願いしますよ」「事故が続くと、自己負担にされてしまいますよ」と彼に注意をした。弁護はいいかげんだったが、これは心から彼を思ってのホンモノの注意であった。これ以上、彼に事故を起こされたら、僕の管理監督責任が問われる、それは絶対に嫌だからだ。僕は彼の度重なる事故に、ひとつの共通点を見つけていた。それはバック走行中。彼にその点を指摘すると彼は、「首を後ろに向けてバック走行させると右が左になって左が右になりますよね?」と同意を求めてきた。言わんとすることは、わからないでもないが、もしかしておバカさんなのかな。僕が「なりません。たとえそうであっても対応すればいいでしょう」と言い、彼が「すごいですね…」と応じて会話は終わった。

それが2ヵ月ほど前。そして今朝、就業規則の変更が正式に通達された。「ちょっといいですか」彼に呼ばれて話を聞き、僕はそれこそポコチンが抜け落ちるくらいに驚いてしまった。彼は「部長たちが騒ぐから、こんな決まりが出来ちゃったじゃないですか。今度、事故を起こして負担することになったら、どうしてくれるのですか!」と言いのけたのである。こいつ…後ろを見ると左右がわからなくなる己のアホさを棚に上げて…僕が自己保身のためとはいえ部長会議で矢面に立ったのを知らずに…。腸が煮え返るのを抑えて「まあ、ルールだから。事故さえ起こさなければいいんですよ」と僕は言った。「そんな机上の空論は現場では通用しませんよ」とカッコよすぎる捨て台詞を残して彼は外回りに出て行った。

そしてその数時間後。またバック走行中に車をこすったという報告。またコンクリ。メリクリの季節にコンクリ。擦ったのは左後方タイヤの前。どうやればここだけをピンポイントで擦ることが出来るのか…。

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(車体が歪んでドアの隙間が広がってしまっとるがな…)

こんなときどうすればいいのか。左右がわからなくなるのを理由に解雇できるような就業規則の整備に動けばいいのだろうか。ホワイトな会社に移ってもこんな状態で、今、僕は、自分が変人ホイホイなのではないか、僕自身に決定的な要因があるのではないか、己を責めているところである。きっつー。(所要時間ん23分)