Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

アポなし年末挨拶には無慈悲な鉄槌をくだしている。

「年末の挨拶はアポなしでオッケー!」みたいな風潮を抹殺したいと常々思っている。なぜなら、今、年末の挨拶にアポを取らずに来る図々しい客のせいで、僕の気持ちが折れそうだからである。こちらの仕事が納まらねえ。「そんなの断れよ(笑)」と仰る方もおられるだろう。僕個人の問題ならばスパっとそうするが、会社対会社の話なのでそう簡単にはいかないのだ。そもそも、僕が「年末の挨拶に伺いましたー!」とキラキラ笑顔の来客に「無礼者!帰れ!」と言えるようなタフな心を持った人間であれば、会社勤めなどしていない。つまり、アポなし年末挨拶客との戦いは、会社に勤めているかぎり永遠に続くのだ。きっつー。告白しよう。僕自身も長年、アポなしで年末挨拶をしていた。だから今更、アポなしヤメろなんて、わがままなのは、自分でもわかっている。ただひとつ、お利口な僕は、アポなしの挨拶巡礼のなかでひとつだけ禁句を設けていた。そのフレーズだけは絶対に言わないと。

現実問題として今、僕は管理職。挨拶をするよりもされる側になる機会の方が多い。「立場は人を変える」という言葉がある。そこには「あの人は立場を得て立派になった」というポジティブな意味もあれば、「あの人は肩書を得て変わっちまった…」という残念な意味もある。僕は前者でありたかったが、残念な後者である。己のアポなし挨拶歴史を棚に上げて、アポなしで来る客を迷惑だと思っているヒトデナシだ。しかし、なぜ、一本電話をかけてアポを取れないのだろう?ナメているのだろうか。僕の経験からいえば、単に、めんんどくさいからだ。出来るだけ多くのクライアントをまわるためには、クライアントの都合に合わせていられない、そういう考えが年末年始アポなし挨拶にはある。つまり「一年間ありがとうございました。今後ともー」と相手へのサンキューとリスペクトのポーズを取りながら、あくまで挨拶をする側の都合なのである。そういったものを心の底に沈めて、アポなしで年末挨拶にくる取引業者の人に対応している。

アポの有無はあれど客に貴賤なし。僕は出来る限り誠意をもって誠実に対応している。だからアポなしで年末挨拶に来る人が申し合わせたように「お忙しいところアポなしですみません」と言ってきても、誠実に「忙しいし、アポなしは困ります」と返している。すると、営業マンというのは面の皮が厚いものでございまして、恐縮するどころか、「イヤー。お忙しい部長に我々の年末の挨拶のために、わざわざ時間を取ってもらうのもどうかと思いましてー」などとワンダーな理屈を持ち出して、わざわざ時間を割いている僕に言うのだからたいしたものである。どうやら彼らには僕の皮肉とその裏にある本気の嫌がりが伝わらないみたいだ。

ムカつくのは、話が弾んできて面談が長くなってきたとき、わざとらしく腕時計をみて「あっ!」と虚をつかれた声を出し、すみません、私たち次の約束がございまして…などと言ってくるときである。次に会う客にはちゃんとアポを取っているのね、僕は軽く見られているのね、でもわかるよ同じ営業マンだから…顧客ランクAをランクZより大事にするよね…という気持ちを押し殺して、「今度はアポを取ってじっくり話をしましょう」と都会に染まった僕は言ってしまうのである。このように、僕は相手が、僕が禁句としていたフレーズさえ言わなければ、アポなし客であれどもそれなりに丁寧な応対をする。その禁句とは「ちょうど近くに用事があったので」。それを言われると即座に「私に会うのは《ついで》ってことですか?」と詰問するようにしている。もちろん《ついで》のときもあるだろう。暗黙の了解である。だが、アポなしでやって来て、それを言葉にするというのはナイ、というのが僕の考えだ。相手があたふたするのを確認してから「ついででもまあいいですけど、ご用件は?」と追い討ちをかける。「年末のご挨拶にまいりました」と相手が言い終わるのを待ってから、「いやいやそれだけで来社するはずはないでしょう、そろそろ本題に移りましょうよ」とふたたび追い込む。「いえ、今日は挨拶だけで!」と相手が窮すのを見計らって、僕は「じゃあお引き取りを」つって、かつてクソ上司がその身を犠牲にして僕に教えてくれた、『必殺!テーブルに広げた手帳パタン閉じ』を食らわすのである。

ブラック上司が身をもって教えてくれた「時間を生み出す方法」が魔法レベルで役に立っているので全部話す。 - Everything you've ever Dreamed

無慈悲な手帳パタンをやられた人間は皆、魂を抜かれたような顔になるので面白い。たかがアポがないだけで大人気ない、《ついで》だっていいじゃないか、という批判もあるだろう。そしてその批判は相手に対して失礼だ可哀想だという感情からきているのだろうが、そもそも失礼なのはアポなしでやってくる人間であり、可哀想なのは、事務所の扉近くにマイデスクがあるために居留守がつかえず、アポなし客の攻撃を回避できない僕の方なのである。それに、どれほど無慈悲な報復をしても、アポなし年末挨拶に来るような連中は、何もなかったかのように、年が明けたらアポなしで年始の挨拶に来るから、心配するだけ無駄なのである。(所要時間23分)