Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

煽り煽られてイキるのさ

煽り運転マン逮捕された直後から、テレビやネットがフミオ!ガラケー!フミオ!ガラケー!と大騒ぎするものだから、とても他人事とは思えなかった。だが、僕自身は、生来の巻き込まれ体質もあって、煽られる側の人間であった。生真面目に四十キロ制限の県道を四十キロぴったりで走行しては、若者が運転する軽自動車に後ろかチカチカやられ、追い抜く際に中指を立てられるような理不尽な目に遭うことが、本当に、本当に多かった。

そういう頭の悪い若者は、Siriに入れる座薬のようなものである。座薬特有の異物感はSiriの中ですぐに溶けてなくなり、忘れてしまう。僕は大人の余裕を見せて車を停めて道を譲る。座薬バイビー。だが、バックミラー越しに彼らが助手席にセクシーギャルを乗せているのを見てしまうと、座薬の分際でギャルかよ、ザケンナヨ、絶対に許さない、という気持ちが沸いてきて道を譲る気持ちは蒸発、道を譲らず四十キロきっちり維持して走行、相手のイライラを募らせ、座薬とギャルに抜かれる際に口パクで《SHI・NE》とやられるのだ。

「このようなカーライフを送っていたら取り返しのつかない事態になる」ある時期を境に僕はそう考えるようになり、煽られないように努力をするようになった。ドラレコ設置。それからハンドルを握る際にはクロブチ眼鏡をかけ、ヤクルトスワローズの野球帽を被り、ヤベえヤツ感を演出するようになってから煽られることはなくなった。参考にしてもらいたい。こうして僕個人の対煽り運転戦争は沈静化した。

しかし、煽り運転は社会からなくならない。なぜ、煽り運転をするのだろう。ニュースによれば煽り行為の発端は追い越し走行にあるらしい。僕は、追い越しという行為が優越感と劣等感を刺激することに煽りの原因があると考えている。たとえば他人に対して謎の優越感を持っているバカにとって、追い越し車線の前方を走行する車は優れている自分を邪魔をする存在であり、他人に対してどうしようもない劣等感を持っている人にとっては追い越し車線で前方を走る車は、リアルではダメダメな自分を想起させ、絶対に前を走らせたくないと思わせる存在なのである。そして、くだらない自分の立ち位置を守るために、前方に走っている車はあってはならないものとし、抜きにかかり、邪魔だと感じたら煽って、己の戦いに引きずり込み、追い越そうとするのだ。煽り運転をする人たちの勝手な言い分は、自分たちが正しい戦いをしていると信じているからこそ出てくるのだ。迷惑すぎる。

僕は、追い越し車線というネーミングがその種の人間の闘争本能を刺激しているのではないかと思う。なので「ささ、お先にどうぞ車線」という柔らかなもの、「地獄へGO車線」という命のピンチを意識させるもの、「DQN車線」というアイデンチチーを刺激するもの、はいかがだろうか。

だいたい人間というものは生まれてきた時点で素晴らしく、価値のある存在であり、その後の勉強や仕事が出来る出来ない、お金を持っている持っていない、抱いた異性の数といったもので優劣や価値の増減などは、どうでもいい誤差みたいなものだ。そんなもので俺は優れている!だから何人たりとも俺の前は走らせないと考えるのは一ミリを一万光年に拡大解釈しているようなものなのだ。ほんのちょっとの優劣を追い越し車線で証明したり取り返そうとするみたいなのは、バカバカしい行為なのである。

そのように日々考えているので、年長の知人から「何ものにもなれなかった」「こんなはずじゃなかった」と酒を飲みながら言われても、生まれてきた時点で価値があるのだから別にどうでもよくね?と思うばかりなのだ。「良くやりましたよ」と褒めるのも「もっと出来ましたよね」と評価するのもおかしい。自分が納得するかどうかであって、その評価を他人に委ねるのがおかしいのだ。それでもグチグチネチネチ絡んでこられると、酒が不味くなってきて、感情的になり、精神の追い越し車線に乗り込んで「なんかそういうのダサくないっすか?」と煽ってしまう。僕もまだまだ修行不足だ。

つまり、自分が少し成功していたり、自分の思い通りにならなくても、それを追い越し車線的なものに持ち出し、そこで見つけた獲物を相手に証明したり解消したりしようとする行為の極北が煽り運転なのだろう。人間は生まれながらに価値があるので、そんなことをしても己の価値を貶めることこそあれ、上げることにはならないのだけど。普通の人は直感的にそれがわかっているから煽り運転をバカと一刀両断できるけれども、バカには永遠にそれがわからないから繰り返すしやめないのだ。きっつー。煽り運転で逮捕されたフミオさんを見てそんなことを思った。なおこの記事はガラケーによって書かれた。(所要時間27分) 

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