Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

「それは上司の仕事でしょ」という地獄を僕は生きている。

「部長、あの案件はどうなりました?」「先日のあれどうなってます?」他部署の人たちから質問を受けた。当該案件の結果は先週末に判明していた。結果はバツ。担当の部下氏から「僅差で失注でした」と報告を受けていた。彼の結果報告は「勝つときはいつも圧倒的大勝利」「負けるときはいつも僅差での敗退」の2パターンしかない。旧日本軍大本営発表の悪しき遺伝子はここに生きながらえていた。僕は、頭の片隅にクエスチョンを浮かべながら、「ごめん。ダメだったよ」「申し訳ない。ダメでした」と答えた。彼らは一様に「結果は勝負だからいいんです。でも結果が出たら報告をもらえないと協力できるものも出来なくなりますよ」と言った。彼らの言うとおり。頭を下げるしかない。だが、おかしい。協力してくれた面々への報告がなぜ行われていないのか。僕の頭で点滅しているクエスチョンは、当該案件を担当している僕の部下氏に対するものであった。

提案営業をする際、事前に「こんなサービスを提供したいんだけどオッケー?」という関係部署との調整は必須である。営業が勝手にクライアントに提案し、契約後、「こんなの無理」と現場から突き返されたらおしまいだからだ。社内調整は会社内でいいかっこをするためではない。社内での立場なんてどうでもいい。調整を怠ることで迷惑がかかるのは誰か。クライアントだ。それだけは絶対に避けなければならないのだ。営業は強いようで実は現場をはじめとした関係部署の協力がなければ成立しない弱い部署なのである。だから営業部のミーティングでも他部署との調整は念を入れてやるよう、口酸っぱくいっている。

部下氏は新規開発という面では優秀なのだが、平成生まれのわりに古き悪き昭和の営業マンのような、営業が仕事を取ってきてやってるスタンスで仕事を現場に「投げる」傾向があるので少し手を焼いている。そのような傾向が垣間見られるので、正直いって他部署からは良く思われていない。僕は「現場に足を引っ張られたらいい提案なんて出来ませんよ」という部下氏を、キミねー、それはねー、キミのためなんだよー、つって説得し、手を回して関係部署を集めてミーティングをさせた。ミーティングは、コンセンサスを得るだけでなく、現場の声によって営業の側面からでは見落とした穴が見つかって、大変有意義なものになった。話合いのあと、関係部署からの「取れるといいですね」「吉報を待っています」という声に僕は、結果と報告は部下氏からすみやかにさせますね、と答えながら、営業はこういう人たちに支えられているのだなあ、負けられないなあ、と身が引き締まる思いであった。ミーティングの内容を反映させた提案を営業部でフォーマットにまとめて担当の部下氏に持たせ、「結果が出たら、すぐに関係部署に報告すること」といっておいた。

ところが部下氏いわく「僅差での敗北報告」は僕だけにしかなされていなかった。その結果が僕への「案件どうなりました」の問い合わせ。あれだけ自分の口で、直接、力を借りた人たちに結果報告と説明をしろ、それが次に繋がるんだよ、と親心から言っておいたのに。なぜだろう。嫌がらせか。いや、そんなはずはない。そこまで人は悪くなれない。部下氏に「なぜ結果報告を関係部署にしていないのか」と尋ねた。悔しくて言えませんでした。申し訳なくてどうしても伝えられませんでした。僕はそういう青い回答を祈るような気持ちで待っていた。青くなったのは僕の顔面でした。部下氏は「結果とはいい結果のことを指しているのだと思っていました」とワンダーなことをケロっと仰った。それから彼は「部長には報告を入れました。関係各所への悪い報告は部長がしてくれると私は考えていました。ピンチになった部下をフォローするのは、上司の仕事じゃないですか」と付け加えた。オーマイガー。

「部下をフォローするのは確かに僕の仕事だけど…」とショックのあまりポツポツ言葉を出していると、「ですよね」と追い討ちをかける部下氏。ですよね、じゃねえよ。このままじゃ終らせられないので「そうやって自分の仕事を自分に都合よく定義していると誰も協力してくれなくなるぞ。今回は僕のほうから説明はしておいたけれど次は頼むぞ」と注意をしておいた。「了解しましたー。部長、まるで昭和の営業マンみたいですね」と彼は言っていたので響いているかは疑わしい。部下氏の自信満々な様子を見ていると「もしかして間違っているのは僕の方なのだろうか…」と自信がなくなってくる。(所要時間22分)

こういう逆境を乗り越えるための、会社員による会社員のための会社員の生き方本を書きました→ぼくは会社員という生き方に絶望はしていない。ただ、今の職場にずっと……と考えると胃に穴があきそうになる。