Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

在宅勤務のおかげでパパになれました。

私事で恐縮だが、奥様のいる自宅で在宅勤務を続けていたらパパになった。知らせはつい先ほど。突然のメール「パパさんいますか?」。9時から18時まできっちり仕事をやったあと、暇を持て余した僕は、会社アカウントを援護射撃するために作ったツイッターアカウントで、適当に見つけたアカウントをフォローして遊んでいるところだった。プロフには「会社経営者 億り人」と記載。彼女からメールが届いたのはそのときだ。

彼女は僕がフォローして数秒以内にメールを送ってきた。奇跡としか思えない。アーメン。「パパさんはどこ住みですか?」という簡潔なメール。僕は営業で培ったヒアリング技術を駆使して、相手が二十歳の女子大生であることを突き止めた…というより向こうから教えてくれた。これが噂に聞いたパパのアレか。圧倒的積極性じゃないか。だがこちとらだって百戦錬磨の中年男性、易々とやらせはせん。

相手の年齢を知った僕はフレンドリーな口調を意識して接近を試みた。~だぜ、~やってみそ、マジで~。反応は薄かった。彼女は一方的に「黒のガウチョパンツにグレーのコート。ピンクのマスクをして西口交番前います。あなたは?」と現在の服装を通知してきた。やらせはせんぞ。仕方なく「ユニクロのパーカーで自宅にいるぜ」とクールに答えた。無視するように「何時に来られます?」

彼女とのやりとりで界隈の隠語のいくつかを知ることができた。この年齢で新しい知見を得られるなんて、素敵じゃないか。衝撃を受けたのは「ドタキャンが多い」という理由で、サービス内容を知らされない段階で前払いを求められたことだ。ありえない。昨今の不安定な円相場を憂慮してか、支払い方法はビットキャッシュかアマギフ限定。顔写真を送れとも言われた。アホか。

僕の営業マン魂に火がついた。「サービスの説明がなさすぎ。相手にとってどれだけの価値があるサービスなのか説明しないとダメっしょ。ドタキャン多発は営業サイドつまり自分の問題だぜ。顧客ファースト」 すると彼女は「敬語使えない人ムリめ」と敬語を使わずに理由を端的に述べると僕をブロックした。彼女とはそれで終わった。10分に満たないパパだった。

彼女はただの遊びだったように僕には思える。本気にしてはあっさりしすぎていたからだ。今、季節外れの寒空の下、西口交番前に黒のガウチョパンツとグレーのコートを着た女子大生はいない。道化芝居だ。新型コロナの下で僕らは距離を置いて道化芝居を続けていくしかない。彼女がやりとりのなかで使った「自発でお願いします」という隠語の正確な意味を僕は知らない。おそらく自家発電を指しているのだろう。僕らは自家発電していれば他人と触れあわず、誰かを危険な目に遭わせず、ひとりで天国に昇ることが出来る。今は先行き真っ暗だけれども、セーフティにいこう。闇に慣れた瞳に、光はより明るく鮮やかに映ると信じて。(所要時間18分)