中堅部下氏が営業部長(僕)の指示命令を拒否したことが社内で大きな出来事になっている。拒否された命令は、緊急事態宣言下にある東京神奈川エリアの配送業務(ヘルプ)である。業務については配送先(福祉施設や事業所)の指定場所に荷物(食品)を置いてくるのみで、ほぼ人との接触はないようにしているので感染の可能性は低いと思われる。それを部下氏は「感染症にかかるリスクがある、そんな命令には従えない、そもそも国からは休業を要請されているのに社員をそのような業務につかせるのは一企業としてどうかと思います」という理由で拒否したのだ。実のところ僕はかなりムカついたのだが、一方で、そういう意見もよくわかるのだ。誰だって仕事ごときで命を危機に晒したくない死にたくない。灼熱の海の家で30連勤したくない。この話を他部署の部長に相談した。すると「就業規則にのっとって処罰するべき」と強く言われた。きっつー。僕は処罰を求めるためではなく、今後しばらくのあいだは、このような事態が想定されるので業務に穴を空けないために対策をしておいたほうが良いのではないか、という意図で相談をしたつもりだった。うかつだった。部下を処罰することに軽い快感を覚えて仕事だと考えている人間がどの組織にもいることを忘れていた。僕にそういう気持ちは皆無だったので、処罰すべきという声はスルーした。だが、勝手にその部長が社内で運動を起こし、一部上層部と一緒に、ペナルティを与えよ、と重圧をかけてきた。その根拠は会社側には業務命令権があり、就業規則にもあるように正当な理由なく業務命令に従わない場合は処分をすることができる、というものであった。はっきりと組織のメンツを維持するためといえばいい。僕は「正当な理由がないとはいえないのではないか」と反論した。感染症にかかるリスクを取りたくないは正当な理由になりうると反論したのだ。「処分することができる、は処罰しなければならない、ではないですよ」と念も押した。なぜムカついた部下氏の味方をしているのか、自分でも意味がわからなかった。とりあえず、この件についてはあらためて話し合いがもたれることになった。なぜ、当事者の僕が問題にしないといっているのに、大きくしようとするのか。おそらく彼らはヒマなのだ。この状況でやることがなくてヒマだからわざわざ問題をつくっているのだろう。さて、緊急事態宣言の出されている地域での仕事を業務命令で部下にさせることは、問題があるのかないのか。そして感染症にかかるリスク(とても低い)は業務命令を断る正当な理由になりうるのか、教えてもらいたい。僕は当該業務命令自体は間違っていないと考えているが、「感染症にかかるリスク」が業務命令を断る正当な理由になるのか、よくわからない。そして僕の預かり知らないところで、在宅勤務中の中堅部下氏にも担当部署からヒアリングがあったらしく、「問題にするなら先ず部長から私に通告してください。軽蔑します」と非難される始末。「僕はチミを擁護しているんだけど」と言える空気はそこになかった。きっつー。(所要時間17分)