Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

鬼滅の上司

ブームは後から参戦しようとした人たちに「あ、なんか乗ってる人たちがダサいな」と思われたときが終わりの始まりなんじゃないだろうか。先日の会議の冒頭に、社長が「新型コロナの影響で厳しい状況が続くが、全集中で!」なんて言った瞬間、僕は、鬼滅ブームのクライマックスを見た気がした。

「社長の中で鬼滅がキテル」と気付いた上層部の方々が、注意を惹こうと、「ここは全集中で!」「全集中で乗り切りましょう」などと、要所要所で「全集中」を使いはじめたのだ。《こういうプロセスを経て流行が定番になっていく…。》寂しいような嬉しいような気持ちで、ご高齢の上層部一同に突如、巻き起こった鬼滅騒ぎを聞き流していたら、「全集中で終わらせておくべきでしたが」「あれは全集中の予定では…」などと前後の文脈がつながらない全集中があらわれてきて、よもやよもやの様相になってきて眠気が吹っ飛んでしまった。ゼンシューチュー・ノ・ヨテー。前週中だろ。それ。

哀しいかな、平均年齢が60代後半の上層部は、一次情報ではなく、原作や映画に触れた子や孫との会話や、朝の情報番組で報じられていた「鬼滅ブーム」から鬼滅情報をゲットして、手塚先生の「どろろ」みたいな漫画という間違いだらけのイメージを作り上げておられたが、具体的にどのような作品なのか、まったく知らない。知らないものを知らないままキャッチ―な部分を話しているから妙なことになるんだろうなあ…そんなふうに冷静に眺めていると、ブームは異形の方向へ加速していて「こういうときこそ深呼吸よりも強い全呼吸」「激動の時代こそ求められるのは禅の心…」「営業部長には強い柱になってほしい。会社のために犠牲になる気持ちを持って」などというワケ分からない活用形まであらわれる始末。

雑談が許される空気になったときに、我慢できずに、鬼滅を知っているのか、上層部に訊ねると「知っているに決まっているだろう」と社長の手前で一致する面々であった。「竹輪を加えている子が出てくるだろ?それくらい常識だよキミ」という声を聴いたときに僕はもう何も言わないと決めた。たぶん彼らには禰豆子と獅子丸の区別がついてない。

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会議は、体調不良で倒れた担当者の代理で僕が家庭用おせちの販売事業を任されることで全一致で決まり終わった。人柱である。いつかブームは終わる。僕にとっての鬼滅ブームの終わりのはじまりはこの会議になるだろう。実績がある。半年ほど前だろうか、情報番組で情報をゲットした上層部が「明日最終回の『100日後に死ぬワニ』は大ブームになります。ワニにちなんだ商品を用意した方がいいかもしれません」と会議で発言して、ワニ食品の検討をしはじめた翌日、100日ワニのブームは光の速さで終わった。無惨であった。(所要時間14分)