Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

47才になった。

f:id:Delete_All:20210219112940p:plain

2月13日に47才になった。どこに出しても恥ずかしくないアラフィフだ。47。信長は人生50年とうたい、赤穂浪士は47人で吉良邸に討ち入りを果たした。人生について振り返るいい機会だ。絶好調な日は少なくなり、疲れが残るようになった。ネガティブなことばかりではない。煩悩は順調に減っている。今の僕の煩悩の数は2つ減って106である。もう47才なので、人に媚びたりはしたくない。あるがままに生きていきたい。そう誓った。

そんな決意を新たにしたバースデーのランチタイム。リビング。ダイニングテーブルの向こうから奥様が「お誕生日おめでとう。欲しいものがあるでしょう。言ってみて」と言った。僕が、予想外の言葉に戸惑っていると、彼女は目を大きく開いて「キミの欲しいもの…頭に浮かんでいるものは7文字ですね」と決めつけてきた。何も思い浮かべていない頭の中が読めるのだからすごい。魔女か。「うーん」僕は腕を組んだ。目の前にあるマグカップのコーヒーは冷めきっている。コーヒーに映る僕の顔は、肌のくすみが除去されて20歳ほど若く見えた。「早く言いなさい。7文字です」と詰められる。僕は腕を組んだまま天井を見上げて自分の欲しいもの、7文字を思い浮かべていった。「エ〇い〇いじん」(自主規制)「じ〇しだいせい」(自主規制)「〇ン〇〇〇ょう」(自主規制)、どこまでも煩悩でひたすらにEROな言葉たちが僕の頭に浮かんでは消えていった。

「さあさあ」目の前にいるミニーちゃんのエプロンを首からさげた奥様が追い詰める。47才の朝。媚びたりしない、あるがままに生きる、と誓ってから1時間も立たないうちに、それを撤回して「かぞくりょこう」と心にも思わないウソクソの7文字を出していいのか。それは敗北の生ではないのか。正直な人生からのリタイアではないのか。僕の肝心なときに働かない創造猟区は、哀しいかな、「エ〇い〇いじん」とストレートに口に出したあとの地獄だけはディティールまでリアルに想像できてしまう。僕は40年近く昔の出来事を思い出した。夕方の教室。ホームルーム。「みんな目を閉じて。閉じたわね。さあ、イタズラをした生徒は正直に挙手をしてください」と先生は言った。その言葉には、正直に告白すれば、その正直と勇気に免じて免罪するよ、という意味が感じられた。僕と相棒はそれを信じた。ヒーローになった気分でまっすぐに手を挙げた。信じがたいことに先生は「さあ、みんな目をあけて。イタズラ犯は正直に手をあげてくれましたよ!」と言ったのである。僕は、そのとき、人の言葉を信じると地獄をみることを学んだ。

7文字の恐怖と自分の生き様との狭間で揺れ動いた。だが、会社員として25年生き抜いてきた経験が僕にはある。こういうときは回りくどい言い方をして相手を煙に巻くしかない。僕は「エ〇い〇いじん」を「えほいふぁいじん」と発声した。自分のプライドと安全を「は行」に託したのだ。奥様は「『エモい俳人』になりたい気持ちはわかるけれど自分で努力するしかないよね」と溜息をつき、「欲しいもの。7文字で」と繰り返した。僕は勝ったのだ。精神的な余裕を得たあと、僕は頭の中の引き出しをひっくり返して7文字を答えた…。

問答が終わったあとのダイニングで、奥様はそれから壁に貼られたディズニーカレンダーを眺めながら「本当に好きな人とは結婚できないんだよね」と独り言のように言った。「そうだね。完全に同意だよ」と口に出したら地獄が待っているので言わなかった。媚びずにありのままに生きてみたい。そんな47才の誓いなど光の速さで撤回する。そういう種類の軽さだけは失わないようにしたい。僕が火事場のクソ力でひねり出した7文字は「スーパーマリオ」。スーパーマリオ 3Dワールド + フューリーワールド|オンラインコード版【マリオ35周年キャンペーン対象】スーパーマリオ 3Dワールド + フューリーワールド -Switch

f:id:Delete_All:20210219112237j:image

「ス、スーパーマリオ。ちょうど7文字!新作がちょうど出たんだよ!」と僕が言って「わかりました」と彼女が了承した結果、プレゼントとしていただいた。以来、毎晩、老眼と戦いながら遊んでいる。これが47才、僕の結婚10年目のリアルだ。(所要時間20分)